「年収によっては個人再生できないことあるの?」
個人再生には給与所得者等再生と、小規模個人再生の2種類があります。
サラリーマンなどの給与所得者の場合、年収に関係なく、どちらでも選択することが可能です。
しかし、年収によっては、最終的に返済しなければならない弁済総額が変わることから、慎重に選択すべきでしょう。
詳しくは後述しますが、特に年収が高い方の場合、小規模個人再生を行うことによるメリットが非常に多いのです。
もちろん、普通に返済していけるのであれば、それがベストですが、返済によって生活が圧迫されているといった場合、個人再生を検討してもよいでしょう。
今回は、特に年収が高い場合の個人再生について解説していきます。

目次
個人再生には2種類がある
冒頭でもお話した通り、個人再生には2種類があります。
そこで、まずはそれぞれの特徴を整理しておきましょう。
それぞれの要件やメリット、デメリットなどを知ることによって、どちらを選択すべきなのかが見えてきます。
給与所得者等再生
ひとつめが、給与所得者等再生。
こちらは、その名の通りサラリーマンなどの給与所得者を対象とした制度です。
自営業者の場合、こちらの方法を選択することはできないため、注意が必要です。
最大の特徴は、個人再生が認められる条件にカード会社(銀行・消費者金融・クレジットカード会社)の消極的同意というものが必要無いという点です。
以前は、一部の金融業者や、公的な機関以外はほとんど異議を申し立てることはなかったものの、近年では積極的に異議申し立てを行うカード会社も多くなっています。
しかし、給与所得者等再生の場合、カード会社の同意がなくても認められますので、弊害が少ないと言えるでしょう。
ただし、詳しくは後述しますが、給与所得者再生は、可処分所得の2年分が清算価値にカウントされるというデメリットがあるため、収入が多い方の場合は注意が必要です。
小規模個人再生
もうひとつが、小規模個人再生です。
こちらは、サラリーマンなどの給与所得者以外も行うことが可能となっている方法です。
ただし、サラリーマンも小規模個人再生を選択することができるため、どういった職業形態に関わらず、小規模個人再生で進めていくことが一般的です。
この制度のメリットとして挙げられるのが、収入(可処分所得)によって弁済総額が変動することはないという点である。
もちろん、財産を保有している場合は、清算価値保障の原則(自己破産を行った場合よりも債権者への返済額が大きくなければならないという決まり)から、弁済総額が上がる可能性はありますが、そうでない場合、借金の額を約5分の1にまで圧縮することが可能となります。
ただ、小規模個人再生の場合、債権者の消極的同意が必要であるため、公的機関などからの借入がある場合、失敗してしまう恐れがあるでしょう。
⇒小規模個人再生について詳しくはこちら
⇒個人再生のデメリットは8つだけ押さえておけば大丈夫!!

年収は特に関係ないが無職だとできない
上記の通り、個人再生には2種類があり、特に年収が○○円以上や○○円以下といった要件はありません。
つまり、年収がいくらであっても、個人再生の申し立てを行うことは可能というわけです。
ただし、極端に年収が低い場合や、無職などで収入がない場合は認められない可能性が高いという点は頭に入れておきましょう。
なぜなら、個人再生の場合、自己破産とは違って、借金全額の返済が免責されるわけではないからです。
最低でも、借金総額の約5分の1を原則として3年間で返済しなければいけません。
もし、返済ができなければ、個人再生の認可は取り消されてしまうことになってしまいます。
そもそも、将来的に継続・安定した収入がない場合、再生計画自体を立てることが困難なため、無理な再生計画を立てて、裁判所に提出したとしても認められる可能性は極めて低いといえるでしょう。
そのため、自分の年収で個人再生ができるのか否かがわからない場合は、まずは司法書士や弁護士などの専門家に、状況をまとめた上で相談すべきでしょう。
仮に、年収が低いことで個人再生が困難な場合は、自己破産を検討せざるを得ないかもしれません。
⇒個人再生できない場合とは?/具体的な失敗事例も踏まえ徹底解説
⇒個人再生を選択する人の特徴
⇒個人再生が失敗するケースとは?失敗後の選択肢まで徹底解説!
給与所得者等再生では可処分所得の2年分が清算価値にカウント
先ほど少し触れましたが、給与所得者等再生の場合、カード会社の消極的同意がなくても行うことができます。
しかし、その代わりに2年分の可処分所得が清算価値にカウントされるため、収入の多い方は注意が必要になってきます。
そこで、具体的に可処分所得とは何なのか、そしてその計算方法について解説しておきます。
可処分所得とは、その名の通り、家計の中で自由に使うことのできる額です。
たとえば、収入が30万円で、保険料や税金などを引かれた手取りが25万円とする。
そして、家賃や光熱費、食費など生活を送る上で欠かせない額が15万円とすると、残りの10万円が可処分所得というわけです。
【収入】-【税金・健康保険料などの引かれもの】-【最低限の生活費】=可処分所得
上記の例の場合、毎月の可処分所得が10万円の場合、2年分で240万円となります。
そこで、仮に借金が500万円であったとすると、最低弁済額は5分の1の100万円となります。
しかし、上記の通り、2年分の可処分所得の合計が240万円の場合、弁済額を240万円よりも下げることができません。
清算価値(所有財産の合計額)が200万円しかない場合でも、可処分所得の方が240万円と高額なため、240万円が選ばれるというわけです。
それに対して、小規模個人再生の場合、可処分所得に関する要件はないため、最低弁済額がそのまま弁済総額となるため、最終的に返済しなければならない額に140万円の差が出ることになるのです。
そのため、収入(可処分所得)の多い方が給与所得者等再生を行う場合に注意が必要なのです。
ただ、いずれの制度を選んだ場合においても、持ち家などの財産が、借金額よりも多い場合は、全く減額できないことになります。
理由は明白ですが、財産があるのであれば、それを売却して返済にあてましょう、ということですね。
高収入のサラリーマンほど個人再生をした方がいい
上記の通り、給与所得者等再生の場合、収入が多ければ個人再生の恩恵をあまり受けることができない可能性があります。
しかし、借金の返済が困難な状態になっていたり、生活が圧迫されて苦しい思いをしているのであれば、個人再生を検討すべきでしょう。
借金を大幅に減額することが可能な上に、毎月の返済額を確実に減らすことができるため、生活を安定させることができます。
もちろん、個人再生を行うと一定期間ブラックリストに入り、新たな借り入れや、クレジットカードの使用ができなくなってしまうものの、多額の借金問題を解決することができれば、間違いなく生活水準を向上させることに繋がるでしょう。
また、借金を抱えていることや、取り立てのストレスからも解放されるため、前向きな気持ちで今後の生活を考えることができるでしょう。
個人再生の場合、自己破産と違い、手続き中も資格や職業などが制限されることもないため、これまで通りの生活を送ることが可能なため、収入が減ってしまうような心配もいりません。
つまり、収入の多い方こそ、借金の返済に困ってしまった場合、個人再生を行ってしまった方が良いわけです。

まとめ
個人再生というと、収入が極めて少ない場合に行うもの…そんなイメージを抱いている方も多いことでしょう。
しかし、個人再生に年収は殆ど関係なく、むしろ年収が高い方が個人再生した方がよいケースも少なくありません。
ここでご紹介した、給与所得者等再生の場合のデメリットなどもしっかりと頭に入れた上で個人再生を行えば、その恩恵をしっかり受けることができるでしょう。