「水道代・光熱費などの共益債権は個人再生の手続中でも支払うことができるの?」
「共益債権に含まれるものは、個人再生で減額されるの?」
個人再生は借金の利息免除・元本圧縮が可能な債務整理です。
個人再生の手続き中は、カード会社からの支払い請求が一時ストップし、個人再生の認可決定が降りるまで支払いができなくなります。
しかし、なかには特別に個人再生の手続き中でも支払いができるものがあります。
それが「共益債権」です。
本ページでは、共益債権にどんなものが含まれるか、個人再生において、共益債権がどのように扱われるかについてご説明します。
目次
共益債権とは?
共益債権とは、個人再生に関わる全ての人(あなたやカード会社、裁判所など)にとって、利益となるものに対して支払う費用のことをいいます。
説明だけをみると少し複雑に感じますが、簡単にいえば、個人再生後に圧縮された借金を返済していくために必要な費用、個人再生を行った人やその家族が生活していくために必要最低限かかる費用、個人再生の手続に必要な費用などが、この共益債権に含まれます。
たとえば、共益債権の1つに、手続きをした人の生活にかかる水道代・光熱費などの生活費が含まれます。
個人再生は、手続きの結果認可決定が降りたとしても、借金が0になるわけではありませんので、手続き後も借金の返済が続きます。
借金を返済するためには収入を得る必要があり、収入を得るためには、仕事に精を出せるような必要最低限の生活環境が必要です。
水道代や光熱費が支払えないために、「水道・ガス・電気が止まって生活できない……」となってしまうと、収入が滞り、返済が困難になる可能性もあり、返済が困難になればあなただけでなく、カード会社にとっても損になるわけです。そのようなことがないように、共益債権というものが設定されています。
個人再生で共益債権はどのように扱われるの?
カード会社からの借金、住宅・自動車ローンなどは「再生債権」と呼ばれ、個人再生を行うことによって利息の免除や元本の圧縮が可能です。
しかし、共益債権は、個人再生をしても利息の免除や元本の圧縮などの減額はされません。
また、個人再生の手続きをすると認可決定が降りるまで借金の返済はもちろん、その他の支払いについても制限が生じますが、共益債権に関してはそのような制限がなく、個人再生の手続中であっても支払うことが認められています。
個人再生で減額されないのは共益債権だけ?
実は、個人再生で減額されないのは、共益債権だけではありません。
その他にも、「一般優先債権」や「非減免債権」という支払いが減額されませんのでご注意ください。
一般優先債権には、国に支払う税金や保険料が含まれます。
また、非減免債権には、悪意を以って行った行為への損害賠償金が含まれます。
これらの支払いは、減額されず、個人再生の手続き後も継続して支払うことになります。
共益債権に含まれるのはどんなもの?
共益債権には、主に以下のようなものがあります。
<共益債権に含まれるもの>
- 個人再生手続き開始後の水道・光熱費や家賃
- 個人再生手続き開始後の養育費
- 別除権協定を結んだ特殊な借金(事業用の自動車ローンなど)
- 個人再生手続きにかかる個人再生委員への報酬 など
個人再生手続き開始後の水道・光熱費や家賃
個人再生手続き後の返済を続けるためには、生活をし、仕事をすることで収入を得る必要があります。
そのため、個人再生後にかかる必要最低限の生活費は共益債権として扱われます。
たとえば、水道代、電気代、ガス代(光熱費)や、アパート・マンションを借りて住んでいる場合の家賃などのことです。
これらの支払いが個人再生によって制限されてしまうと、水道・電気・ガスを止められてしまったり、今住んでいるアパート・マンションを追い出されてしまう可能性があります。
これでは、借金を返済するどころか、生活することさえ難しくなってしまうわけです。
生活が難しくなり、返済が滞ってしまえば、カード会社も困ってしまうので、水道・光熱費や家賃は共益債権として扱われ、個人再生後も今まで通り水道・光熱費や家賃を払い続けることができます。
個人再生手続き開始後の養育費
個人再生前に離婚をしており、その協議で養育費の支払いが発生している場合、これも共益債権に含まれます。
養育費は、子どもが生活していくために必要な費用です。
それが個人再生によって減額されてしまったら、その子どもは生活を送ることが困難になってしまうため、養育費は特別扱いされています。
たとえば、離婚協議で「毎月末までに5万円の養育費を支払う」と決まっていた場合、個人再生の手続中も、認可決定が降り、返済が再開したあとであっても、関係なく養育費を支払うことができます。
別除権協定を結んだ特殊な借金
自動車ローンや機械のリースなどは、個人再生の対象に含まれると、借金が減額される代わりに自動車や機械などを没収されてしまいます。
しかし、これらが仕事に必要なものであれば、裁判所に特別な許可を得てカード会社と「別除権協定」を結ぶことができます。
別除権協定とは、あるローンを優先的に返済する権利のことをいいます。
元来、個人再生では「債権者平等の原則」に基づき、すべての借金を平等に扱うことがルール化されています。
しかし、別除権協定を結べば、そのローンだけは優先的に返済することができ、結果的に自動車や機械などを手元に残して個人再生ができるというわけです。
また、個人再生の手続中に、業務上どうしても返済が必要な借金が生じていた場合、これも裁判所の許可を得ることで共益債権として取り扱われ、特別に優先的な返済が許されることがあります。
債権者平等の原則とは?
債権者平等の原則とは、個人再生においてカード会社を平等に取り扱わなければならないというルールです。
債権者(カード会社など)を保護する目的で定められており、あなたがある一部のカード会社にだけ優先的に借金の返済を行ったり(偏頗弁済)、一部のカード会社からの借金を裁判所に申告しなかったりすると、債権者平等の原則に反し、個人再生語の返済額(計画弁済額)が上乗せされてしまったり、個人再生そのものが失敗してしまったりします。
このようなことを防ぐためにも、個人再生を行う際は、カード会社に勝手な返済をしたり、借金を裁判所に隠したりせず、依頼する弁護士や裁判所の指示に従うように心がけましょう。
個人再生手続きにかかる個人再生委員への報酬
申し立てを行う地方裁判所にもよりますが、個人再生を行う際は、個人再生委員の選任が必須である裁判所が多いです。
個人再生委員とは、あなたの個人再生をサポートする役割を持つ人のことで、裁判所が弁護士を選任することが多いです。
個人再生の手続きをする場合、個人再生委員への報酬として、15〜25万円の予納金を支払う必要があります。この費用も共益債権として扱われます。
⇒個人再生委員とは何する人?誰にでも絶対につくの?
⇒個人再生による奨学金の扱いは?
⇒銀行ローンを個人再生する際に注意するポイント
まとめ
- 共益債権とは
・個人再生をする人、される人(カード会社)どちらにも利益のある支払いのこと
<主な共益債権>
・水道代・光熱費・家賃など生活に必要な支払い
・離婚協議によって決定した養育費の支払い
・業務用のローンなど裁判所に許可を得た特別な借金の支払い
・個人再生手続きにかかる個人再生委員への報酬 など - 共益債権は個人再生をしても減額されない
・個人再生で減額されないのは、「共益債権」「一般優先債権」「非減免債権」
・共益債権は個人再生の手続き中であっても支払い可能