「個人再生の再生計画案とはどんなものなのか?」
「再生計画案を作る上でのポイントとは?」
借金を大幅に減額してもらえる手続きである個人再生。
そして、裁判所に個人再生を認めてもらうために必須となるのが、再生計画案です。
再生計画案とは、個人再生することで減額された借金を、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)にどのように返済していくかを記載した書面になります。
個人再生をする多くの人が行う小規模個人再生においては、カード会社の過半数が反対するか、反対するカード会社の借金額が借金総額の過半数を超えた場合には、再生計画案が不認可になってしまうため、カード会社が納得してくれる内容にする必要があるのです。
そこで今回は、再生計画案の作成方法と、カード会社に納得してもらうためのポイントについて解説したいと思います。

目次
個人再生における再生計画案とは
まずは、個人再生の再生計画案が、どのようなものなのか説明します。
再生計画案とは
再生計画案とは、個人再生することで減額された借金を、カード会社にどのように返済していくかを記載した書面のことです。
個人再生すると、1/5~1/10程度まで減額された借金を、原則3年間(最大5年間)で返済していく必要があります。
個人再生では、減額された借金をどのように返済していくか再生計画案に具体的に記載し、裁判所に提出することが必須なのです。
裁判所に提出した再生計画案が認可されると、約1か月後に認可が確定します。
この確定した再生計画に基づいて、確定日翌月の末日からあなたの借金返済がスタートすることになるのです。
小規模個人再生ではカード会社過半数の認可が必要
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続きがありますが、大半の人は小規模個人再生で手続きをするのが一般的です。
小規模個人再生では、カード会社の過半数が反対するか、反対するカード会社の借金額が借金総額の過半数を超えた場合には、再生計画案が不認可となります。
また、再生計画の遂行ができる見込みがないと判断された場合も同様です。
再生計画案が不認可になると、借金はそのまま残り、個人再生はそこで終了となります。
したがって、再生計画案が不認可になった場合には、不認可になった原因を解消して再度個人再生の申し立てをするか、自己破産するしかなくなるのです。
再生計画通り返済できない場合には個人再生が取り消される
再生計画案が認可され借金の返済をはじめたものの、計画通り返済できなくなった場合には、カード会社の申し立てによって再生計画が取り消されることがあるため注意が必要です。
再生計画が取り消されると、減額された借金は元の状態に戻ってしまいます。
ただし、会社の倒産やリストラ、あなたが大病を患って働けなくなった場合など、やむを得ない事情がある場合には、返済期間を延長してもらうことが可能です。
さらに、このとき借金の3/4以上を返済していれば、残った借金をチャラにしてもらえる「ハードシップ免責」という制度を利用することもできます。

個人再生における再生計画案の作成方法
次は、再生計画案の作成方法について説明したいと思います。
再生計画案の提出期限
個人再生の申し立てが認可され、開始決定がなされると、裁判所から再生計画案の提出期限が指示されます。
再生計画案の提出期限は、開始決定から通常3~4か月後に設定されるのが一般的です。
期限内に提出された再生計画案は、裁判所からカード会社に送付されます。
再生計画案にはカード会社の決議が必要になるため、あまりにも無謀な計画や杜撰な計画だった場合には、否決されることもあるのです。
そのため、カード会社の意向もくみ取った上で、現実的に返済できる計画を作ることが重要になります。
再生計画案の作成方法
再生計画案は、既存のフォーマットがあるため、そちらに準じて必要項目を記載していくことになります。
なお、再生計画案のフォーマットは、日本弁護士連合会のホームページからWord形式のファイルをダウンロードすることが可能です。
1:借金の減額率を決定する
まず、あなたの借金をいくらまで減額するのかを決定します。
借金の減額率は、手続きによって異なるため、しっかりと把握しておきましょう。
- 小規模個人再生:法定最低弁済額か清算価値のいずれか多い方
- 給与所得者等再生:上記2つと2年分の可処分所得額のうち、最も多いもの
「法定最低弁済額」とは、借金総額に応じて借金の減額率が法律によって決められたものです。
「清算価値」とは、あなたが破産した際、所有している財産を処分しカード会社に分配する金額になります。
個人再生には、「清算価値保証の原則」と呼ばれるルールがあるため、借金を減額してもらう代わりに、あなたの財産以上の金額を返済する義務があるのです。
そして、「可処分所得」とは、あなたの収入から税金や光熱費、生活費などを引いた手取り金額となります。
これらのルールに則って借金の減額率を決定し、再生計画案に記載する必要があるのです。
2:返済期間を決定する
次に、借金をいつまでに、いくら支払うのかという返済計画を具体的に記載します。
返済計画に、記載する項目は次の通りです。
- 返済期間(原則3年間で最大5年間まで延長可能)
- 分割払いの方法(支払い頻度は3ヶ月に1回以上)
- 1回ごとの返済額
これらを踏まえ、いつまでに、にいくら返済しているのかという、具体的な計画書を作成していきます。
返済期間は原則3年間とされていますが、会社の収益悪化や病気などによるやむを得ない事情がある場合、裁判所に認めてもらうことで最大5年間まで延長の申請をすることが可能です。
また、借金の返済頻度は3ヶ月に1回以上とされていますので、3ヶ月に1回返済する計画でも、毎月返済する計画でも問題ありません。
3:共益債権や一般優先債権の支払い方法を決定する
最後に、個人再生の減額対象にならない、共益債権や一般優先債権の支払い方法について決めておく必要があります。
これらについては、再生計画案とは別に返済していく必要があるのです。なお、共益債権と一般優先債権に該当するものには、次のようなものがあります。
- 共益債権:光熱費や水道代、養育費、離婚した配偶者の子どもへの養育費、個人再生委員の報酬など
- 一般優先債権:所得税や住民税といった税金や社会保険料など。

再生計画案を通すためのポイント
前述したように、個人再生を成功させるためには、再生計画案を通すことが必須条件です。
そのため、カード会社に反対されないような再生計画案を作る必要があります。
カード会社の納得感
小規模個人再生では、カード会社による再生計画案の決議が行われます。
そのため、再生計画案を作成する場合には、カード会社が納得する内容であることが重要です。
いっぽう、給与所得者等再生では、カード会社の同意は不要なのですが、異議を申し立てることはできるため、こちらについても納得感を得られる内容にしておくべきでしょう。
カード会社の同意を得やすい再生計画案とは
カード会社の同意を得やすい再生計画案にするためのポイントとしては、あなたの収入と最低弁済額のバランスを取ることで、できるだけ多くの金額を返済する姿勢を見せることです。
たとえば、収入が多い人の場合であれば、最低弁済額よりも高い金額を支払うような計画にしておくことで、カード会社の同意も得やすくなるでしょう。
個人再生には、前述した最低弁済額があるため、法律上はこのルールを満たした金額を返済すればOKとなるのですが、あなたの収入が多い場合には、最低弁済額を返済するだけではカード会社が納得しない可能性が高くなるのです。
そのため、最低弁済額よりも多い金額を支払う再生計画案にして、カード会社の譲歩を得られやすくしておくことが重要なポイントといえます。
まとめ
- 再生計画案とは、個人再生することで減額された借金を、カード会社にどのように返済していくかを記載した書面のこと
- 小規模個人再生では、カード会社の過半数が反対するか、反対するカード会社の借金額が借金総額の過半数を超えた場合には、再生計画案が不認可となる
- 再生計画が取り消されると、減額された借金は減額前の状態に戻ってしまう
- 再生計画案の提出期限は、開始決定から通常3~4か月後に設定されるのが一般的
- 再生計画案の作成手順は次の通り
1:借金の減額率を決定する
2:返済期間を決定する
└返済期間(原則3年間で最大5年間まで延長可能)
└分割払いの方法(支払い頻度は3ヶ月に1回以上)
└1回ごとの返済額
3:共益債権や一般優先債権の支払い方法を決定する
└共益債権:光熱費や水道代、養育費、離婚した配偶者の子どもへの養育費、個人再生委員の報酬など
└一般優先債権:所得税や住民税といった税金や社会保険料など。 - 再生計画案を通すためのポイント
└カード会社が納得する内容であることが重要
└カード会社の同意を得やすい再生計画案にするためのポイントとしては、あなたの収入と最低弁済額のバランスを取ることで、できるだけ多くの金額を返済する姿勢を見せること