「自己破産てどんな制度?」
「自己破産をしたら借金がゼロになるって本当?」
自己破産とは、借金の返済が困難になったときに考える債務整理の1つです。
債務整理のなかでも最も強い効力を持つ一方、ほかの債務整理にはない注意点が存在します。
本ページでは、自己破産の概要やメリット・デメリット、手続きの流れや費用などについてご説明します。

目次
自己破産とは?
自己破産とは、裁判所を通じた債務整理の1つで、借金の利息・元本がともに免除される手続きのことです。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあり、任意整理や個人再生は元本が免除されることがない一方、自己破産は元本まで免除になるため、最も効力が強い債務整理といわれています。
自己破産のメリット
自己破産には大きく4つのメリットがあります。
<自己破産のメリットとは>
- 借金がゼロになる
- 収入がなくても手続きが可能
- 生活に必要な財産は手元に残せる
- 自己破産手続き後に得た財産は没収されない
以下では、それぞれのメリットについてご説明します。
自己破産をすると借金がゼロになる
自己破産をするとカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から借りた借金の利息・元本がすべて免除され、借金がゼロになります。
申立をした段階で、カード会社からの請求はストップし、裁判所で認可が下りれば、以後の支払い義務はなくなります。
そのため「どう頑張っても返済が難しい」という状況であっても、解決が可能です。
収入がなくても手続きが可能
任意整理や個人再生といった手続き後も返済が必要になる債務整理は、返済できるだけの収入がなければ債務整理を行なうことができません。
しかし、自己破産の場合は、手続き後の支払い義務がなくなるので、収入が少ない人や無収入の人、生活保護受給者や年金受給者でも手続きができます。
生活に必要な財産は手元に残せる
後述しますが、自己破産をすると家や土地など一部の財産が没収されてしまいます。
しかし、家電や生活用品など、生活に必要な財産は手元に残すことが可能です。そのため、自己破産後、財産の没収によって生活ができなくなることはありません。
自己破産手続き後に得た財産は没収されない
自己破産手続きで没収される財産は、手続き前から所持していた財産の一部です。
自己破産後に得た財産は没収されませんのでご安心ください。また、手続き後の支払い義務はないので、手続き後に得た収入も返済に回す必要はなく、生活の立て直しに活用できます。
自己破産のデメリット
一方で、自己破産のデメリットは以下の通りです。
<自己破産のデメリットとは>
- 一部の財産を没収される
- 保証人のいる借金がある場合保証人に迷惑がかかる
- 手続き期間中に職業制限がある
- ブラックリスト入りしてしまう
- 税金・賠償金は免除の対象にならない
以下では、デメリットについて詳しくご説明します。
一部の財産を没収される
自己破産を行なうと、財産を没収・売却され、その売り上げをカード会社に分配することによって支払い義務を果たしたことにします。
自己破産で没収される主な財産は以下のとおりです。
<自己破産で没収される主な財産>
- マイホーム・土地などの不動産
- 自動車・株・預金など20万円以上の価値を持つ財産
- 99万円を超える現金 など
逆に、20万円以内の価値しかないマイホームや自動車・株などの財産や、99万円以内の現金は自己破産後も手元に残すことができます。
また、自己破産で財産を没取されたくないからといって、持っている財産を申告しなかったり、手続き前に売却してしまったりすると、財産隠しとみなされ、裁判所の認可が降りなくなることもあるため、手続き時の財産の申告は正確に行うようにしましょう。
保証人のいる借金がある場合保証人に迷惑がかかる
借金のなかには保証人・連帯保証人を立てて借り入れるタイプのものもあります。
保証人付きの借金を債務整理すると、利息や元本の免除なく、保証人に全額請求がいってしまうため、保証人が大きな迷惑を被ることになります。
自己破産では、すべての借金が対象となり、保証人付きの借金だけを対象から外すことはできません。
そのため、保証人付きの借金をしている人が自己破産をすると、保証人へ必ず迷惑がかかってしまいます。
保証人付きの借金をしている人が自己破産をするときは、事前に保証人への説明をするようにしましょう。
手続き期間中に職業制限がある
自己破産の手続き中は職業や資格に制限が生じます。
以下のような職業は一時的に就けなくなりますので、ご注意ください。
<自己破産の手続き中に就けなくなる主な職業>
- 弁護士・公認会計士などの士業
- 警備員
- 特定保険募集人
- 国家公安委員 など
自己破産の手続きには、3ヶ月〜1年程度の期間がかかります。
現在その職業に就いている人は、業務を停止されてしまいます。
ただし、会社は自己破産を理由に解雇することはできないため、これによりクビになることはないでしょう。
なお、手続き完了後は従来どおり上の職業に就くことができます。
ブラックリスト入りしてしまう
自己破産に限らず、債務整理をした場合は個人信用情報に傷がつく「ブラックリスト入り状態」になってしまいます。
ブラックリスト入りしている間は、以下のことができなくなります。
<ブラックリスト入りするとできなくなること>
- クレジットカードの利用や新規作成
- ローンの新規契約
- 携帯電話の本体料金分割支払い
- 親族・知人などの借金の保証人・連帯保証人になること など
自己破産の場合、ブラックリスト入りする期間は5〜10年です。
ブラックリストから外れたあとは、再びクレジットカードの作成やローンの契約が可能になります。
税金や賠償金は免除の対象にならない
自己破産はカード会社からの借金を利息・元本ともに免除してくれます。
しかし、税金や賠償金などを滞納していても、自己破産によって免除されることはありません。
以下のような借金は免除されませんのでご注意ください。
<自己破産で免除されない借金>
- 税金
- 社会保険料
- 養育費
- 従業員への給与
- 罰金 など
また、損害賠償金や慰謝料は故意や重過失によって相手に損害を与えたことによるものの場合、免除されないことが多いです。
一方、故意や重過失ではないものの場合は免除されるケースもあります。このあたりは、裁判所の判斷で決定されます。

自己破産のよくある誤解
「自己破産」と耳にすると、その後の人生への悪影響など、良からぬイメージを持つ人もいます。
以下では、自己破産に関するよくある誤解についてご説明します。
自己破産は勤め先にバレる?
自己破産をしたことが勤め先に知られてしまう確率はかなり低いです。
ただし、会社から借金をしている場合には、借金が免除されるため、知られてしまうでしょう。
また、金融業など個人信用情報と関わりが深い業種に勤めている人も知られてしまいやすいといえます。
自己破産が会社にバレたらクビになる?
自己破産をしたことが会社にバレても、クビになったり、降格や減給の原因になってしまったりすることはありません。
社員を自己破産を理由に解雇してしまうと、不当解雇にあたり、会社が罰せられる可能性もあるからです。
自己破産をするとパスポートの発行・更新ができない?
自己破産をしても、パスポートの発行・更新に影響はありません。
また、パスポートに自己破産の記録が残ることもありません。
自己破産の手続き中は、海外渡航の際に裁判所の許可が必要になるケースもありますが、自己破産後は自由に海外渡航することも可能です。
自己破産すると選挙権がなくなる?
自己破産をしても選挙権がなくなることはありません。
同様に、「住民票に自己破産の記録が残る」と思っている人もいますが、住民票に自己破産の記録が残ることはありません。
自己破産の条件とは?
自己破産はどんな人でも行えるわけではありません。
以下では、自己破産ができる条件についてご説明します。
<自己破産の条件とは?>
- 借金返済の支払いが不能
- 免責不許可事由がない
借金返済の支払いが不能
自己破産ができるのは、「どんなに頑張っても借金の返済ができない」という場合です。
収入がない場合や、あっても少ない場合、あるいは借金総額が高額すぎて支払いきれない人などが該当します。
実際の手続きでは、あなたの収入や借金、財産の状況から支払不能かどうかを裁判所が判断しますが、目安としては返済額が月々の手取り給与の3分の1以上になる場合「支払不能」と判断される可能性が高いです。
免責不許可事由がない
免責不許可事由とは、自己破産を認めることができない条件のことです。
免責不許可事由には、以下のようなものがあります。
<免責不許可事由とは>
- 債権者(カード会社)に損をさせるために、財産隠しや財産の売却をした
- クレジットカードで購入したものを換金し利益を得た(クレジットカードの現金化)
- 特定のカード会社に偏った返済をした
- 借金の原因がギャンブルなどの浪費
- はじめから自己破産をするつもりで借金をしていた
- 裁判所に提出するカード会社一覧で嘘をついた
- 裁判所からの調査に協力しなかったり、嘘をついたりした
- 過去にも7年以内に自己破産をしている など
以上に該当する事柄があれば、自己破産が認められなくなってしまいます。
免責不許可事由があっても裁量免責で自己破産が認められるケースもある
一方、免責不許可事由があっても、改善の余地がある場合などは裁判所が「裁量免責」として、特別に自己破産を認めてくれることもあります。
たとえば、ギャンブルによって借金をしてしまい、支払不能になってしまった人の場合、元来であれば免責不許可事由があるため、自己破産は認められません。
しかし、「今後はギャンブルで浪費しません」など、本人が反省し、以後の生活を再建する意思がある場合、裁量免責によって自己破産が認められることもあります。
免責不許可事由に該当することがある場合は、予め弁護士などに相談してみるといいでしょう。

自己破産手続きの流れ
実際に自己破産を行なう場合、手続きの流れは以下のとおりです。
まずは弁護士へ相談
自己破産を考えたら、まずは弁護士に相談しましょう。
債務整理に強い弁護士事務所を選ぶことをおすすめします。
相談の結果、自己破産をする意思が固まったら、弁護士に正式に自己破産を依頼します。
カード会社からの請求停止
弁護士は、自己破産の依頼を受け、あなたが借金をしているカード会社へ受任通知を送付します。
カード会社は受任通知を受け取ると、それ以降の請求や取り立てができなくなります。
書類の準備
自己破産にはさまざまな提出書類が必要です。
一例は以下のとおりです。
<自己破産の主な提出書類>
- 申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 財産目録
- 給与証明書・源泉徴収票
- 退職金支給明細書
- 戸籍謄本・住民票
- マンション等の賃貸借契約書
- 不動産登記簿謄本
- ローン残高証明書
- 車検証
- 生命保険証
- 預金通帳 など
申立書や陳述書などの作成は弁護士事務所が中心となって行ってくれますが、あなた自身も給与証明など必要書類の準備が必要です。
自己破産の申立て
自己破産の申立ては最寄りの地方裁判所へ行います。
申し立てからおよそ1ヶ月後、裁判所へ出廷し、裁判官からの質問に回答する必要があります。
自己破産手続きの開始
裁判所への出廷のあと、自己破産手続き開始の決定となります。
自己破産にはその人の収入・財産・借金総額に応じて同時廃止事件・管財事件・少額管財事件の3つに分けられますが、その判断もこのときに行われます。
<自己破産の種類>
- 同時廃止事件……財産がほとんどない場合。手続き期間は3〜4ヶ月。
- 管財事件……財産がある場合。財産の詳細な調査や没収が行われる。手続き期間は6〜12ヶ月。
- 少額管財事件……管財事件だが、財産の種類が少ない場合。手続き期間は3〜4ヶ月。
自己破産の種類が決定したあと、再び裁判所へ出廷し、免責審尋(めんせきしんじん) という面談が実施されます。
免責許可の決定
免責審尋から2週間程度で免責許可の決定が行われます。
これにて自己破産の手続きは完了し、借金はゼロになります。
自己破産にかかる費用はどのくらい?
自己破産を行なう際は、裁判所へ支払う費用と、弁護士へ支払う費用が発生します。
また、その額は自己破産の種類に応じて変化します。以下では、自己破産にかかる費用について種類別にご説明します。
同時廃止事件の場合
同時廃止事件の場合、裁判所へ支払う費用は3万円程度です。
弁護士に支払う費用は20万円程度で、合計して30万円程度の費用がかかります。
管財事件の場合
管財事件の場合、裁判所へ支払う費用は30万円程度です。
弁護士に支払う費用は40万円程度で、合計して70万円程度の費用がかかります。
少額管財事件の場合
少額管財事件の場合、裁判所に支払う費用は20万円程度です。
弁護士に支払う費用は30万円程度で、合計して50万円程度の費用がかかります。
以上のように、同時廃止事件が最も費用が安く済み、管財事件が最も費用が高くなります。
自己破産にかかる弁護士費用は分割支払が可能
自己破産を検討する人は、お金に困っているため、自己破産の費用を捻出できないケースもあるでしょう。
そこで多くの弁護士事務所では、自己破産にかかる弁護士費用の分割支払いを認めています。
弁護士費用の支払いが不安な場合は、分割支払が可能な弁護士事務所を探しましょう。
自己破産をしようと思ったらまずは弁護士に相談
自己破産にはメリットもデメリットも有り、認められるためには条件を満たしている必要があります。
自己破産を考えたら、まずは弁護士に相談してみましょう。
相談することによって、自己破産をする意思が固まれば、そのまま依頼することも可能ですし、場合によっては、その他の債務整理を提案される可能性もあります。
自分にあった債務整理を行なうためにも、法の専門家の力を借りることをおすすめします。
まとめ
- 自己破産とは借金の利息・元本が免除される債務整理
・カード会社からの借金が0になる
・裁判所を通じた債務整理のため、すべての借金が対象 - 自己破産のメリット
・借金がゼロになる
・収入が少ない・まったくない場合でも申請できる
・生活に必要な財産は手元に残せる
・手続き後に得た財産は没取されない - 自己破産のデメリット
・一部の財産を没収・売却される
・保証人・連帯保証人に迷惑がかかる
・手続き中に職業制限が生じる
・ブラックリスト入りしてしまう
・税金や賠償金などは免除されない - 自己破産にまつわるよくある誤解
・自己破産が勤め先にバレてもクビにならない
・自己破産をしてもパスポートは発行・更新できる
・自己破産をしても選挙権はなくならない - 自己破産の条件
・支払不能状態にある
・免責不許可事由がない
→ただし、免責不許可事由があっても改善の余地があれば、裁量免責で自己破産を認めてもらえることがある - 自己破産手続きの流れ
・弁護士へ相談
・カード会社からの請求停止
・書類の準備
・自己破産手続きの申し立て
・自己破産手続きの開始
・免責許可の決定 - 自己破産の費用
・自己破産の種類によって異なる
・同時廃止事件の場合、合計で30万円程度
・管財事件の場合、合計で70万円程度
・少額管財事件の場合、合計で50万円程度
・弁護士費用は弁護士事務所によっては分割支払が可能