「連帯保証付きの住宅ローンでも個人再生できるのか?」
「連帯保証人が個人再生するとどんな影響がある?」
個人再生の住宅ローン特則は、借金を大幅に減額してもらいつつ、住宅ローンの残った自宅を手元に残せるという夢のような制度です。
また、住宅ローン特則は、連帯保証人付きの住宅ローンでも問題なく利用できます。
しかし、住宅ローンの連帯保証人が個人再生した場合には、住宅ローン特則は利用できません。
さらに、あなたには、ローン会社に残債を一括返済する義務も発生するのです。
ただし、あなたが住宅ローンの返済を継続できていれば、そのような事態にならないケースも多いですが、注意するに越したことはないでしょう。
そこで今回は、連帯保証人と住宅ローン特則の関係などについて、詳しく解説したいと思います。

目次
個人再生と住宅ローン特則
まず、個人再生と住宅ローン特則について簡単に説明しておきましょう。
個人再生とは
個人再生は、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10まで減額してもらえ、残った借金を原則3年間で返済することができれば、完済扱いにしてもらえる債務整理(借金問題を法的に解決するための手続き)の1つです。
ただし、個人再生では借金を減額してもらえる代わりに、最低弁済額という借金額に応じて決められた金額を返済する必要があります。
個人再生における清算価値保証の原則
個人再生において、財産は「清算価値」として扱われます。
清算価値とは、あなたが自己破産した際、裁判所が財産を換価(お金に換えること)処分して、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)に分配される金額と同等価値のことです。
また、個人再生には、「清算価値保証の原則」と呼ばれる、あなたが保有する財産が最低弁済額より多い場合には、個人再生後に返済する金額が財産と同じ金額まで引き上げられるというルールもあります。
たとえば、最低弁済額が300万円だった場合でも、500万円の不動産を所有していれば、個人再生後支払う借金が500万円まで引き上げられるというわけです。
住宅ローン特則とは
個人再生には、一定の条件を満たすことで、借金を減額してもらいながら住宅ローンの残った自宅を手元に残せる「住宅ローン特則」という制度があります。
したがって、住宅ローン特則が利用できれば、個人再生しても住宅ローンの残った自宅を手放す必要はありません。
住宅ローン特則を適応した再生計画が認可された場合、住宅ローンはこれまでどおりか、支払い期間を若干変更して払い続ける必要があります。
このように、住宅ローン特則が利用できれば、住宅ローンの残った自宅を失うことなく、それ以外の借金については大幅に減額してもらうことができるのです。
住宅ローン特則を利用するための条件
住宅ローン特則を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
個人再生の申し立て要件を満たしていること
住宅ローン特則を適用するためには、まず個人再生するための要件を満たす必要があります。
ちなみに、個人再生でほとんどの人が行う手続きである、小規模個人再生の申請条件は以下の通りです。
- 個人であること
- 借金総額5,000万円以下(住宅ローンは除く)であること
- 原則3年間で、最低弁済額か清算価値のどちらか多い方を支払える程度の安定収入が得られる見込みがあること
個人再生は、減額された借金を原則3年間で返済していく必要があるため、継続的に借金を返済していける安定収入が必須条件とされています。
あなたが所有する居住目的の住宅であること
住宅ローン特則の対象になるのは、あなた自身が居住している住宅1棟のみです。
よって、別荘や投資用のマンションなどは対象外となります。
しかし、個人事業主などで、自宅の一部をオフィスなどにしている場合でも、その部分を差しいて残った額を住宅ローン特則の対象とすることが可能です。
ただし、その場合には、居住面積が1/2以上あることが条件とされています。
住宅ローン以外の抵当権がついていないこと
抵当権とは、ローンの返済が滞った場合に、担保となっている対象について優先的に返済が受けられる権利となります。
また、住宅ローンの抵当権は、住宅ローン以外の借金の担保として設定することも可能です。
よって、その場合には、住宅ローン特則を利用しても、抵当権を持った会社によって、自宅が没収されてしまいます。
したがって、住宅ローン以外に抵当権が付いている場合には、住宅ローン特則は利用できません。
住宅購入用のローンかリフォームローンであること
住宅ローン特則の対象となるのは、住宅購入用のローン、またはリフォームローンのみです。
よって、それ以外のローンは、住宅ローン特則の対象外となります。
保証会社による代位弁済から6ケ月以内であること
あなたが住宅ローンの返済を延滞すると、代位弁済といって、保証会社がローンを肩代わりし、ローン会社に一括返済します。
代位弁済が行われると、保証会社はあなたに一括返済を求め、返済できない場合、自宅は競売にかけられるのが一般的です。
しかし、代位弁済が行われてから6ヶ月以内であれば、住宅ローン特則を利用できます。
また、競売がはじまっていても、ストップすることが可能です。
ただし、代位弁済後6ヶ月以上が経過している場合には、住宅の所有権が完全に保証会社に移るため、住宅ローン特則の利用はできません。

連帯保証人付きの住宅ローンで住宅ローン特則を利用する場合
では、ここまでの説明を踏まえ、連帯保証人付きの住宅ローンを返済している人が、個人再生するとどうなるのか解説したいと思います。
連帯保証人付きの住宅ローンでも住宅ローン特則が利用可能
住宅ローンを組む際、連帯保証人を付けることがあるのですが、そのような場合でも個人再生することは可能です。
さらに、前述した条件さえ満たしていれば、住宅ローン特則も問題なく利用できます。
返済を継続できれば連帯保証人への影響はない
連帯保証人付きの住宅ローンを持った状態で個人再生すると、通常であればそちらも整理対象になるため、ローン会社から連帯保証人にローンの一括返済を求める督促がいくことになります。
しかし、住宅ローン特則を利用すれば、個人再生の整理対象から連帯保証人付きの住宅ローンを除外できますので、連帯保証人に迷惑をかけずに個人再生することが可能です。
ただし、個人再生後、減額された借金と住宅ローンの両方を返済していけることが条件になります。
住宅ローンの連帯保証人が個人再生した場合
次に、住宅ローンの連帯保証人が個人再生すると、住宅ローンやあなたにどんな影響を及ぼすのか説明します。
連帯保証債務に住宅ローン特則は適応されない
前述したように、住宅ローン特則の対象になるのは、住宅購入用のローンかリフォームローンのみとなります。
したがって、住宅ローン以外の借金は、住宅ローン特則が利用できないため、他の借金と同様、個人再生の整理対象となり減額、分割払い扱いとなるのが普通です。
そして、住宅ローンの連帯保証人になるということは、
- ローン会社:連帯保証人に対して連帯保証債務履行請求権を持つ
- 連帯保証人:ローン会社に対して連帯保証債務を負担する
という図式になります。
つまり、住宅ローンを組んだあなたが、ローンの返済ができなくなった場合には、ローン会社は連帯保証人に対して一括返済するよう求められる権利を持ち、連帯保証人はその責務を全うする義務があるというわけです。
そして、この連帯保証債務は、住宅購入用のローンでもリフォームローンでもないため、住宅ローン特則は利用できません。
したがって、住宅ローンの連帯保証人には、住宅ローン特則は利用できないということになるのです。
以上のことから、住宅ローンの連帯保証人が個人再生すると、他の借金と同じように減額対象となり、原則3年間の分割返済をしていくことになります。
最低弁済額が高額になってしまう
前述した通り、個人再生における借金の減額率は最低弁済額と清算価値の大きさで決まります。
なお、借金額に応じた、最低弁済額は次の通りです。
たとえば、借金総額が2,000万円だった場合には、300万円が最低弁済額となります。
しかし、このとき住宅ローンの連帯保証債権が3,000万円だった場合には、借金額は
2,000万円 +3,000万円 =5,000万円
となり、最低弁済額が500万円にアップしてしまうのです。
つまり、個人再生後に返済する金額が200万円も増えてしまいます。
そして、最低弁済額が増えるということは、裁判所があなたの個人再生を認可するハードルも上がるということです。
したがって、最低弁済額が300万円であれば認可してもらえたが、500万円に上ってしまったことが原因で、裁判所に「支払いできる見込みがない」と判断され、個人再生できなくなる可能性も出てくるでしょう。
そうなった場合には、自己破産するしかありません。
また、個人再生は5,000万円以下の借金が対象となるため、連帯保証人の借金額と連帯保証債務の合計額が5,000万円以上だった場合にも、自己破産するしかなくなります。
住宅ローンの期限利益を失う可能性がある
住宅ローンの契約内容には、連帯保証人が個人再生や自己破産した場合には、期限利益を喪失する旨の条項が記載されていることが一般的です。
期限利益とは、住宅ローンを分割払いで支払える権利のことで、これを失った場合には、残債を一括返済しなくてはいけないことになります。
つまり、連帯保証人が個人再生すると、住宅ローンを組んだあなたは残りのローンを一括返済する必要があるというわけです。
ただし、実際には、あなたが住宅ローンを滞りなく返済できていれば、期限利益を喪失しない場合が多いでしょう。
しかし、その代わりに、新たな連帯保証人を求められる可能性が高くなります。
とはいえ、ローン会社によって方針はさまざまですので、きちんと話しあった上で、対策を決めるようにしましょう。
あなたと連帯保証人の両方が個人再生した場合
最後に、あなたと連帯保証人が同時に個人再生すると、どうなるのか解説します。
原則として住宅ローン特則は利用できない
ここまで説明した通り、住宅ローンの連帯保証人が個人再生した場合には、住宅ローン特則は利用できません。
そのため、あなたと同時に個人再生した場合でも、連帯保証債務には変わりないため、住宅ローン特則は利用できないことになります。
よって、
- 連帯保証債務:個人再生の対象となり減額・分割返済
- あなたの住宅ローン:期限利益を喪失し一括返済のみ
となり、たとえあなたが住宅ローン特則を利用したとしても、一括返済になってしまうため、ほとんど意味がない状態になってしまうわけです。
そうなると、抵当権を持つローン会社に自宅が没収され、競売にかけられてしまうでしょう。
連帯保証人と共に住む住宅であれば利用できる可能性もある
前項のような状態になった場合には、個人再生の目的である、借金問題に苦しむ人を救うことが困難になります。
ただし、あなたが住宅ローンの返済を続けている場合であれば、実質的に損をする人は誰もいないということです。
そのため、裁判所によっては、連帯保証債務履行件に対しても住宅ローン特則の利用を許容するケースもあります。
たとえば、連帯保証人があなたと生活を共にする配偶者であれば、これに該当する場合が多いようです。
そのため、住宅ローン特則の対象となる住宅に、一緒に住んでいるような場合であれば、住宅ローン特則の利用を許可してくれる可能性も高くなるでしょう。
ただし、裁判所やローン会社によって、考え方が異なりますので、個人再生の手続きをお願いする弁護士や司法書士などに相談し、早めに策を講じるのが得策です。

まとめ
- 「住宅ローン特則」とは、借金を減額してもらいながら住宅ローンの残った自宅を手元に残せるいう個人再生の制度
- 住宅ローン特則を利用するためには、「あなたが所有する居住目的の住宅であること」、「住宅購入用のローンかリフォームローンであること」といった条件がある
- 連帯保証人付きの住宅ローンでも住宅ローン特則の利用は可能。ただし、ローンの返済を継続することが条件となる
- 住宅ローンの連帯保証人が個人再生しても、住宅ローン特則は利用できないため、他の借金と同じように減額対象となり、原則3年間の分割返済をしていくことになる。また、最低弁済額が高額になってしまう上に、住宅ローンの期限利益を失う可能性がある
- あなたと連帯保証人の両方が個人再生した場合、原則として住宅ローン特則は利用できないが、連帯保証人があなたと生活を共にする配偶者であれば、裁判所に利用を認めてもらえる可能性もある