「任意整理ってどんな債務整理?」
「任意整理のメリット・デメリットが知りたい」
任意整理とは、個人再生・自己破産などと同じ債務整理の1つです。
しかし、裁判所を通さずに手続きを行うことができるため、比較的手続きが簡単で、デメリットが少ないといわれています。
本ページでは、任意整理のメリット・デメリット、手続の流れなどについてご説明します。

任意整理とは
任意整理とは、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)からの借金の利息を免除し、元本の支払期間の延長を交渉できる債務整理です。
個人再生や自己破産などその他の債務整理と違って、裁判所を介さず、弁護士とカード会社の直接交渉によって行える手続きなので、対象となる借金を自分で選ぶことができます。
任意整理のメリット
任意整理のメリットは以下のとおりです。
<任意整理のメリット>
- カード会社からの催促がストップする
- 職業制限がなく職場への影響がほとんどない
- 今持っている財産を維持できる
- 今後かかる利息をカットできる
- 対象となる借金を自分で選べる
- 手続きが簡単 など
以下では、それぞれのメリットについて詳しくご説明します。
カード会社からの催促がストップする
弁護士に任意整理を依頼すると、弁護士からカード会社宛に「受任通知」という書類が郵送されます。
この書類は、あなたが弁護士を通じて任意整理をすることにしたということを、カード会社に知らせるためのものです。
カード会社は受任通知を受け取ると、任意整理の手続きが終了するまで、借金の支払いの請求や催促ができなくなります。
借金に困っている人の多くは、カード会社からの支払い請求や催促で、精神的に追い詰められてしまいます。
任意整理をすることで、請求や催促が一時的にストップすることで、精神的にも安心できることでしょう。
職業制限がなく職場への影響がほとんどない
任意整理は職場への影響がほとんどない債務整理です。
たとえば、自己破産のように職業制限が生じることもありませんし、裁判所を介したその他の債務整理のように官報によって債務整理をしたことが職場にバレることもありません。
職業制限がない
債務整理のなかで最も効力の強い自己破産では、手続の最中に職業制限が生じ、弁護士・税理士などの士業、警備員など特定の職業に就けなくなってしまいます。
しかし、任意整理では、手続中でもこのような職業制限は生じません。
そのため、仕事に与える影響が少ないといえます。
職場に任意整理をしたことが知られにくい
個人再生や自己破産のように裁判所を通じた債務整理の場合、官報という行政機関が発行する文書に個人情報が掲載されてしまうため、まれに職場にあなたが債務整理をしたことを知られてしまう可能性があります。
しかし、任意整理は裁判所を介さずに行なう債務整理のため、手続きを行っても官報に掲載されず、職場に債務整理が知られてしまう可能性は低いです。
今持っている財産を維持できる
任意整理では住宅・自動車・高級品など、現在持っている財産を処分せずに借金の負担を減らすことができます。
これは、任意整理では財産の没収される必要はなく、対象となる借金を自分で選ぶことができるからです。
任意整理では財産の没収・売却はない
自己破産では、手続きを行うと時価20万円以上の財産を没収・売却されてしまいます。
没収・売却で得た利益をカード会社に分配することによって返済義務を果たしたことにするためです。
しかし、任意整理では、利息は免除されるものの元本は支払い続けるため、手持ちの財産を没収・売却されることはありません。
自動車ローン・住宅ローンを除外すれば車やマイホームを残せる
自動車ローンや住宅ローンは自動車やマイホームを担保に設定してお金を借りています。
そのため、ローン返済中にこれらを債務整理してしまうと、借金の負担が軽減される代わりに担保となっていた自動車やマイホームを引き上げられてしまいます。
しかし、任意整理はその他の債務整理と異なり、対象とする借金を自分で選ぶことができます。
そのため、自動車ローンや住宅ローンを返済中の人が任意整理を行なうときは、これらのローンを対象から除外すれば、自動車やマイホームを手元に残したまま債務整理ができます。
今後かかる利息をカットできる
任意整理を行なうと、それ以降の利息を免除することができます。
特に、クレジットカード会社や消費者金融などから借金をしている場合、高金利である可能性が高いため、任意整理をすることによって借金の負担が大幅に軽減する可能性があります。
300万円の借金を任意整理した場合
たとえば、年利15%で300万円の借金をしており、それを3年間で完済しようとする場合、月々の返済額はおよそ10万4千円となり、完済する頃には10万4千円×3年間(36回払い)でおよそ374万円の返済が必要です。
つまり、およそ74万円もの利息が取られることになります。
しかし、任意整理をすれば、この74万円の利息はカットされるため、元本の300万円だけを分割で返済すればよくなります。
返済が元本だけでよくなれば、同じ3年払い(36回払い)でも、月々の返済額はおよそ8万3千円程度となりますし、交渉によって5年払い(60回払い)まで支払期間を延長できれば月々の返済額は5万円まで圧縮されます。
このように、任意整理によって利息の免除と支払機関の延長をうまく活用すれば、毎月の支払額を減らし、生活の負担を大きく軽減できます。
対象となる借金を自分で選べる
前述の通り、任意整理では対象とする借金を自分で選ぶことができます。
先程の例のように自動車ローンや住宅ローンを対象から外して、自動車や住宅などの財産を手元に残すことも可能ですし、保証人のいる借金を除外することで、保証人に迷惑を掛けることを防ぐこともできます。
保証人のいる借金を債務整理の対象に含めると、その借金は利息も元本も一切免除・圧縮されず、保証人に一括請求されてしまいます。
そのため、保証人のいる借金を債務整理すると、保証人に多大な迷惑を掛けてしまいます。
任意整理では、保証人のいる借金を除外し、その他の借金だけを債務整理できるため、このようなことを回避できるわけです。
その他の債務整理より手続きが簡単
任意整理は弁護士事務所に依頼すると、その手続のほとんどを弁護士事務所がやってくれます。
個人再生や自己破産のように、裁判所へ赴く必要もありません。
また、手続きに必要な書類も少なく、手続き期間も3〜6ヶ月程度と比較的短いといえます。
任意整理のデメリット
一方、任意整理には、以下のようなデメリットもあります。
<任意整理のデメリット>
- 一定期間ブラックリスト入りしてしまう
- 借金の元本は減らない
- 手続き後も支払い義務がある など
以下では、それぞれのデメリットについてご説明します。
一定期間ブラックリスト入りしてしまう
任意整理をはじめとする債務整理は、手続きをすることによって個人信用情報に傷がつく、いわゆる「ブラックリスト入り」状態になってしまいます。
ブラックリスト入りすると、一定期間以下の様なことができなくなってしまいます。
<ブラックリスト入りすると……>
- クレジットカード会社の使用・作成ができない
- ローンの新規契約ができない
- 携帯電話契約時の本体料金分割支払いができない
- 親族・知人の借金の連帯保証人になれない など
任意整理によってブラックリスト入りする期間は5〜10年です。
ブラックリストから外れたあとは、再び以上のことができるようになります。
借金の元本は減らない
任意整理は個人再生・自己破産と比較すると効力が弱く、利息は免除されるものの、元本が圧縮されることはありません。
そのため、元本が高額だったり、収入が少なかったりして全額返済が難しい場合には向かない債務整理といえます。
たとえ元本だけになっても完済が難しい場合には、個人再生や自己破産などその他の債務整理も視野に入れて検討しましょう。
手続き後も支払い義務がある
任意整理は自己破産と異なり手続き後の支払い義務がなくなることはありません。
そのため、任意整理を行なう際は、弁護士に「毎月いくらまでなら返済に充てられるか」を伝え、返済計画を立てる必要があります。
無収入の人や、収入が少なくほとんど返済に充てられない人は、返済義務がなくなる自己破産も検討しましょう。

任意整理の手続きの流れ
任意整理は債務整理のなかでは手続きが簡単で、手続きにかかる期間も3〜6ヶ月と割合短いという特徴があります。
以下では、任意整理の手続きの大まかな流れについてご説明します。
<任意整理の手続きの流れとは?>
- 弁護士・司法書士に相談・依頼
- 弁護士からカード会社へ受任通知の送付
- カード会社へ取引履歴開示請求
- 過払い金などの引き直し計算
- 分割返済の交渉・和解締結
弁護士・司法書士に相談・依頼
任意整理を検討したら、まずは弁護士・司法書士など法の専門家に相談しましょう。
弁護士事務所を選ぶ際は債務整理に強い、実績のある事務所を選ぶことをおすすめします。
また、事務所によっては、初回の相談を無料で承っているところもあります。
弁護士・司法書士に相談し、任意整理を行なう決意が固まったら、その場で弁護士・司法書士に任意整理を依頼することも可能です。
また、「ほかの弁護士事務所にも相談してみたい」という場合には複数の事務所に相談に行ってから、一番よいと思った事務所に依頼するのでも良いでしょう。
弁護士からカード会社へ受任通知の送付
弁護士に任意整理を依頼すると、まずは弁護士事務所からカード会社へ受任通知が送付されます。
受任通知とは、あなたとカード会社との契約の間に弁護士が介入したことを伝えるための書類です。
カード会社は受任通知を受け取ると、任意整理の手続が終わるまで借金の支払い請求、催促などができなくなりますので、あなたは手続きが終わるまで一時的に支払いをしなくてよくなります。
カード会社へ取引履歴開示請求
受任通知を送付し、借金支払いの請求がストップしたら、次は弁護士がカード会社にあなたとの取引履歴の開示を請求します。
取引履歴を開示することによって、借金の正確な契約日時や返済の履歴などがわかります。
過払い金などの引き直し計算
取引履歴がわかった段階で、弁護士が利息が適法かどうかなどの確認を行います。
カード会社など貸金業の利息は利息制限法という法律によって上限が決まっています。
そのため、取引履歴から、利息が法的な上限の範囲内で設定されているかの確認などを行い、借金の残高を正確に割り出します。
たとえば、2010年以前から借金をしている人の場合、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金とは、借金の返済をしている最中に取られすぎてしまった利息のことです。
引き直し計算をすることによって、借金の総額が大幅に少なくなる人もいます。
分割返済の交渉・和解締結
引き直し計算によって割り出された正確な借金額をもとに、弁護士がカード会社と返済計画の交渉を行います。
利息の免除のほか、カード会社によっては最長で5年間までの支払期間の延長をしてくれることがあります。
すべてのカード会社との交渉が完了したら、手続きは完了です。以後は決められた金額を毎月返済していくことになります。
任意整理にかかる費用とは?
任意整理では、対象とするカード会社1社につき3〜5万円の費用で手続きを行うことができます。
つまり、カード会社3社の借金を任意整理した場合、それにかかる費用は9〜15万円、カード会社5社の借金を任意整理した場合、それにかかる費用は15〜25万円ということです。
まとめ
任意整理とは、裁判所とカード会社の直接交渉によって借金の利息免除や支払期間の延長ができる債務整理
- 任意整理のメリット
・カード会社からの催促がストップする
・職業制限がなく職場への影響がほとんどない
・今持っている財産を維持できる
・今後かかる利息をカットできる
・対象となる借金を自分で選べる
・手続きが簡単 - 任意整理のデメリット
・一定期間ブラックリスト入りしてしまう
・借金の元本は減らない
・手続き後も支払い義務がある - 任意整理の手続きの流れ
・弁護士・司法書士に相談・依頼
・弁護士からカード会社へ受任通知の送付
・カード会社へ取引履歴開示請求
・過払い金などの引き直し計算
・分割返済の交渉・和解締結 - 任意整理にかかる費用
・カード会社1社につき3〜5万円