「個人再生で官報にはいつ載る?」
「官報掲載で個人再生がバレる!?」
個人再生すると、あなたの住所、氏名や個人再生に関する情報が、官報と呼ばれる政府が発行する広報誌に3回掲載されます。
個人再生した方は、官報への掲載を断ることはできません。
そのため、「家族や会社に個人再生したことがバレるのでは……」と気になる方も多いと思います。
しかし、官報は一般の方が目にする機会はほとんどないので、官報への掲載が原因で個人再生したことが家族や会社にバレる可能性は低いでしょう。
今回は、個人再生するといつ官報に載るのかと、個人再生したことが官報に載ることで、家族や会社にバレるかどうかについて説明します。

個人再生すると載ってしまう官報とは何なのか?
個人再生すると、官報にあなたの住所や氏名、個人再生したことなどが掲載されます。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申立することで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらい、その残りを原則3年間(最大2年延長して5年間)で返済できれば完済扱いにしてもらえる債務整理(借金問題を法的に解決するために国が整備した制度)です。
つまり、個人再生とは、「裁判所に借金の減額を許可してもらう債務整理」といえるでしょう。
そもそも官報とは何なのか
「官報」とは、国が発行する政府情報に関する公な伝達手段とされています。
官報は1883年(明治16年)に太政官文書局によって創刊されました。
そして、現在も内閣府から毎日(行政機関の休日を除く)発行されています。
また、官報の編集や印刷、ネット配信などについては、国立印刷局の担当業務です。
なお、官報に掲載されている内容は、以下のようなものです。
- 法律、政令、条約などの公布に関する情報
- 裁判所が出す決定(個人再生や自己破産、相続など)
- 国会や皇室に関する広報内容
- 公務員の人事異動の情報(一部役職のみ)
- 企業の合併や決算情報など
つまり、官報とは「国が発行する広報誌のようなもの」といえるでしょう。
なお、官報には紙媒体のものとインターネットに掲載されるものの2種類があります。
個人再生すると官報に載るのはなぜ?
前述した通り、個人再生すると官報に載ってしまうのですが、そもそもなぜ官報に掲載されてしまうのでしょうか。
その理由は、大きく2つあります。
理由1:個人再生は裁判所を介する債務整理だから
官報に裁判所が出す決定が掲載される関係上、個人再生の開始決定といった手続の進捗に関する情報も掲載されます。
そのため、個人再生した方は、官報への掲載を拒否することができないのです。つまり、「個人再生が裁判所を介する債務整理である」ことが、官報に載ってしまう理由のひとつといえます。
理由2:債権者に不利益を与えないため
個人再生すると借金が大幅に減額されるため、お金を貸した債権者(クレジットカード会社・消費者金融・銀行などの貸金業者)に大きな損失を与えることになります。
そのため、少しでも債権者側の不利益を減らすために、個人再生の手続を行う際には、債権者に「債権届け出(借金額を明確にするため、債権者の氏名や住所、所在地、連絡先、債権の内容や種類、金額などを裁判所に提出すること)」の提出を促すことや、「再生計画案(個人再生後の具体的な借金返済計画のこと)」に対して意見を申立できる機会が用意されているのです。
その際、官報に個人再生の進捗情報を掲載することで、すべての債権者に意見の申立を行う機会を与えています。
つまり、「個人再生された債権者が不利益を被らないように、平等な機会を与える」ことが、官報に載る2つめの理由といえるでしょう。

個人再生で官報に掲載される情報
個人再生すると、以下の情報が官報に掲載されます。
- 個人再生した人の氏名
- 個人再生した人の住所
- 決定年月日時:個人再生の開始決定などが出された日付と時間
- 主文(再生計画認可といった決定事項)
- 債権届出期間(債務者が債権者一覧表【債務者と借金額のリスト】に対して異議申し立てする期間)
- 一般異議申述期間(債務者【個人再生する方】が債権者側に異議申し立する期間)
- 個人再生の事件番号
- 個人再生の申立をした裁判所名
個人再生で官報に載る個人情報は、基本的に住所や氏名だけとなりますので、借金額や債権者の名前といった情報は掲載されません。
なお、上記内容は、小規模個人再生(個人再生をするほとんどの方が行う手続。
ただし、再生計画案に債権者の同意が必要)、給与所得者等再生(サラリーマンや公務員のために整備された手続。
申立のハードルは高いが、再生計画案に債権者の同意は不要)のどちらの場合でも同様です。
個人再生で官報にはいつ載る?
個人再生で官報に掲載されるタイミングは、原則として以下3回となります。
1回目:再生手続の開始決定時
個人再生で官報に載る1回目のタイミングは、裁判所から「再生手続の開始決定」が出されたことを掲載するときです。
なお、再生手続の開始決定は、個人再生の申立をしてから約1ヶ月後になるのが一般的となっています。
ただし、裁判所に個人再生の申立をした後で、申立書や提出書類に不備が見つかった場合には、修正作業などが入って期間が長くなる可能性もありますので、申立後1ヶ月程度が絶対というわけではありません。
2回目:書面審議・意見聴取の決定時
個人再生で官報に載る2回目のタイミングは、再生計画案に対して債権者が書面審議(小規模個人再生の場合)、意見聴取(給与所得者等再生の場合)を行うときになります。
小規模個人再生で手続きを行った際には、再生計画案に債権者の過半数による消極的同意(賛成ではないが反対でもないという程度の同意)と、借金額の過半数を占める債権者の消極的同意が必要です。
そのため、債務者側から提出された再生計画案の内容を審議する期間が、債権者側に認められています。
いっぽう、債権者の再生計画案への同意が不要な給与所得者等再生の場合にも、債権者側に意見を申立する機会が設けられており、意見聴取が行われるのです。
なお、再生計画案への書面審議と意見聴取の時期は、個人再生の申立から3ヶ月~5か月程度になることが一般的となっています。
3回目:再生計画の認可決定時
個人再生で官報に載る最後のタイミングは、裁判所による再生計画の認可決定が出されたときです。
この官報掲載から2週間(14日)経過すると、再生計画の認可決定が確定となり、その後債務者による借金の返済がスタートします。
なお、再生計画の認可決定の時期は、個人再生の申立から5か月程度になることが一般的です。
個人再生の手続が取り消し・廃止になったとき
個人再生で官報に載るのは、原則として前述した3回のタイミングになりますが、他にも再生手続が取り消しや廃止になったような場合には、掲載されます。
なお、官報に載る際の見出しは、以下の通りです。
<小規模個人再生>
- 小規模個人再生による再生手続き開始
- 小規模個人再生による書面決議に付する決定
- 小規模個人再生による再生計画認可
- 小規模個人再生による再生計画取消し
- 小規模個人再生による再生手続き廃止
<給与所得者等再生>
- 給与所得者等再生による再生手続き開始
- 給与所得者等再生による再生計画案についての意見聴取
- 給与所得者等再生による再生計画認可
- 給与所得者等再生による再生計画取消し
- 給与所得者等再生による再生手続き廃止
個人再生して官報に掲載されるとどうなる?
個人再生して官報に3度も載ると、「それなりの影響が私生活に出そう……」と思うのが普通だと思います。
しかし、実際には、個人再生で官報に載ってもそれほど大きなデメリットはありません。
個人再生で官報に載ったことが家族や会社にバレる可能性
まず、一般の方で官報を普段から見ているというケースは、ほぼありません。
さらに、官報自体の知名度も、一般的には非常に低いものです。
そのため、家族や知人、一般企業に勤める上司や同僚などに、官報に載ったことがきっかけで個人再生したことが知られる可能性は非常に低いでしょう。
ちなみに、官報は毎日発行され、掲載情報も日替わりで更新されます。
また、1日で100件以上の破産申請者(自己破産した方)や個人再生した方の住所や氏名などが掲載されているため、あなたが個人再生した情報を探し出すのは非常に困難です。
そのため、金融業や役所の関連部署の方でもない限りは、毎日細かく官報をチェックしません。
さらに、現在では官報に掲載された情報がそれほど重要視されなくなったため、職場にバレる可能性はかなり減っているのです。
一部クレジットカードやローンの審査に影響する可能性がある
個人再生すると5年~10年程度ローンを組んだり、クレジットカードの利用や新規発行ができなくなったりしますが、これは官報に載る影響ではありません。
これは個人再生すると信用情報機関(貸金業者と顧客が適正に取引できるような活動を行う機関)が収集、管理する信用情報(貸金業者と顧客の取引履歴や債務整理に関する情報などが記録されたもの)に事故情報として登録されることによる影響です。
ちなみに、これが俗にいう「ブラックリストに載る」という状態になります。
ただし、一部の貸金業者の中には、官報を信用調査(本当にお金を貸してよい相手かどうか判断する調査)に利用しているところもあります。
たとえば、銀行系のカード会社の中には、今でも官報を信用調査に利用しているところがあるため注意が必要でしょう。
なぜなら、信用情報機関の一つであるKSC(全国銀行個人信用情報センター)が官報の情報収集を行っているため、その会員になっている銀行も官報を閲覧できるからです。
そのため、個人再生すると10年程度の期間は、銀行系のクレジットカードやローンの審査が厳しくなる可能性が高くなります。
具体的な例を挙げると、「民間金融機関」と「住宅金融支援機構」が提携して提供を行っている長期固定金利の住宅ローン「フラット35」は、住宅金融支援機構がKSC会員である関係上、利用できない可能性が高いです。
ただし、官報はあくまでも信用調査の一要素に過ぎません。
したがって、個人再生で官報に載ったからといって、絶対にクレジットカードやローンの審査に通らないというわけではないので、最終的には貸金業者側の判断次第といえるでしょう。
闇金から営業される可能性がある
官報に個人再生した事実が掲載されると、その情報を見た闇金など、違法な利息で貸付を行う悪徳業者から、融資やローンの勧誘を受ける場合があります。
個人再生するとブラックリストに載るため、5年~10年程度の期間は借金ができません。
そのため、新規顧客の開拓をしたい闇金などが、借金できない方の足元を見て高金利で貸付を行おうとするのです。
しかし、闇金の借金は法定金利である「20%/年」をはるかに超える高額な利息が発生しますので、すぐに返済不能になってしまいます。
そのため、どんな甘い誘惑をしてきたとしても、闇金からの借金は絶対にしないようにしましょう。
⇒闇金の借金は個人再生で解決できる?闇金に手を付けてしまった方へ!
官報を閲覧する方法
前述した通り、一般の方が官報を見る機会はほとんどありません。
しかし、見ようと思えば、見ることはできます。
そこで、実際に官報を閲覧する方法には、どのようなものがあるのか紹介しておきましょう。
官報販売所での購入
官報は、全国にある官報販売所で購入することができます。
なお、実際に官報を販売している場所は、「全国官報販売協会」のHP(https://www.gov-book.or.jp/portal/shop/)でご確認ください。
また、官報の定期購読も可能ということで、1ヶ月 3,872円(本体 1,520円+消費税152円+送料2,200円)となっています。
なお、部売りを希望する場合は、各販売所への問い合わせが必要とのことです。
全国の図書館で閲覧する
全国にある図書館の中にも、官報が置いてあるところがありますので、そこに行けば官報を閲覧することが可能です。
ただし、過去1年分のバックナンバーまでといったように、すべての官報が保管されているわけではありません。
また、国立国会図書館の「国立国会図書館デジタルコレクション」(http://dl.ndl.go.jp/search/detail?detailSearchTypeNo=T5&searchConditionParameter=)と呼ばれる過去のデジタル版の官報がアーカイブされているようなケースもあるため、こうしたサービスを利用してみるのもひとつの方法といえるでしょう。
インターネット版官報で閲覧
官報は民間が運営するインターネットの専用サイトである「インターネット版官報」(https://kanpou.npb.go.jp/)でも無料閲覧することができます。
現在(本記事が書かれたのは2019年12月)は、平成15年7月15日以降の法律や政令などに関する官報情報と、平成28年4月1日以降の政府が調達した官報情報のPDFデータが公開されているそうです。また、直近30日分の官報情報も無料で閲覧できます。
官報情報検索サービスを利用する
国立印刷局が運営している有料サイト「官報情報検索サービス」(https://search.npb.go.jp/kanpou/;jsessionid=65HJ8E1O61I3IP9J75J3GOHP6OP3GCPG6CO3EDJ664SJ23C8OG8ME08003R00000.kanpou_001)でも、昭和22年5月3日(日本国憲法施行日)以降のすべての官報情報が検索できます。
日付と記事による2つの方法で検索が可能で、それぞれ料金が異なります。
- 日付検索のみ:紙面版官報を定期購読している場合:無料
⇒新規申し込みの場合:¥1,672(税込み) - 日付検索+記事検索:紙面版官報を定期購読している場合:\528(税込み)
⇒新規申し込みの場合:¥2,200(税込み)
ネット検索に官報の情報はヒットするのか
「Google」や「Yahoo!」といった検索エンジンに、あなたの名前などを入力して官報情報を検索されないか心配されるかもしれませんが、その心配はありません。
なぜなら、インターネット版の官報は基本的にPDF化されたものが掲載されており、検索エンジンにヒットするのはファイル名のみとなります。
そのため、内容の詳細に関しては、検索結果には現れないため、検索エンジンからあなたが官報に載ったことがバレることはないのです。

まとめ
- 個人再生で官報にのるタイミングは原則として、以下の3回
└1回目:再生手続の開始決定時
└2回目:書面審議・意見聴取の決定時
└3回目:再生計画の認可決定時 - 個人再生で官報に載ったことで、家族や会社にバレる可能性は低い
- 官報を閲覧する方法は、図書館やネットの専用サイトを利用すればOK