「利息の安いろうきんからの借り入れは個人再生できるの?」
「ろうきんから借り入れた借金を個人再生すると職場にバレる?」
ろうきん(労働金庫)とは、労働組合や生協などによって創設された非営利団体です。
ろうきんから借金をすると、会員の人であれば年利5%、それ以外の人でも年利6〜7%と低金利で、年利相場が15〜18%のカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から借金をするよりも安く借金ができることがメリットです。
このように通常のカード会社とは少し性質の異なるろうきんからの借金ですが、返済に困ったら個人再生によって解決することはできるのでしょうか?
本ページでは、ろうきんからの借金を個人再生する際の注意点についてご説明します。

ろうきんからの借り入れも個人再生は可能?
ろうきんからの借金であっても、個人再生をはじめとする債務整理を行うことは可能です。
個人再生を行えば、カード会社からの借金と同様に、利息の免除・元本の圧縮を受けることができます。
住宅ローン特則を利用すれば住宅ローンは対象外になる
個人再生は裁判所を通じた債務整理のため、ろうきんからの借金だけでなく、現在あなたが借りているその他のカード会社からの借金も全て対象となります。
そのため、住宅ローンを借り入れており、その返済中だという人が個人再生をすると、担保である持ち家を没収・売却されてしまいます。
ただし、「住宅ローン特則」という制度を利用すれば、住宅ローンだけを対象から外すことができ、担保となっている持ち家を没収されずに済みます。
住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンは今まで通り返済しなければなりませんのでご注意ください。
ろうきんでも住宅ローンの貸し出しを行っています。
あなたがろうきんから借り入れている借金が住宅ローンのみであり、個人再生時に住宅ローン特則を利用する場合は、ろうきんからの住宅ローンは個人再生の対象から外れ、手続き後も返済を継続しなければなりません。
利息が低いので任意整理では解決できない可能性が高い
債務整理には、効果の小さい順に任意整理・個人再生・自己破産があります。
ろうきんからの借金は、もちろん任意整理を行うことも可能なのですが、任意整理では解決できない可能性が高いです。
なぜなら、任意整理は利息の免除が可能な債務整理であり、元本が圧縮されたり、免除されたりすることはないからです。
ろうきんからの借金は年利が低く、もとから利息が安いので、その利息をカットしたからといって、大きな減額にはつながらないことが多いです。
そのため、利息免除と元本が圧縮ができる個人再生、あるいは利息も元本も圧縮される自己破産などを検討することが現実的でしょう。
「ろうきんで借り入れた借金をどうにかしたいけど、自分にどの債務整理が合っているかわからない」というときは、弁護士事務所に相談に行くことをおすすめします。
ろうきんから借り入れた借金を個人再生するときの注意点
前述のように、ろうきんからの借金は個人再生によって、その負担を軽減することができます。
一方で、ろうきんからの借金を個人再生する際は、以下の点に注意しましょう。
個人再生が勤務先にバレる可能性が高い
ろうきんの借金では、返済方法が給与天引きであることが多く、個人再生をすると勤務先にバレやすいといえます。
給与天引きだとなぜ勤務先にバレやすいかは以下でご説明します。
ろうきんから借り入れた借金は返済方法が特殊で、給与天引きによって返済することが一般的です。
つまり、勤務先の給与からろうきんへの返済額の引かれた分が、手取りとして口座に振り込まれるシステムです。
あなたが個人再生の手続きを開始すると、弁護士からカード会社へ「介入通知」という書類が送られ、手続きが終わるまですべての返済請求が一時停止します。
このタイミングで、ろうきんによってあなたの勤務先へ給与天引き停止の通知が行き、給与天引きがストップします。
ろうきんは給与天引きストップの理由として、あなたが個人再生の手続きを始めたことを勤務先に伝えてしまう可能性が高いです。
事前に伝えておけば弁護士が口止めを交渉してくれることもある
ただし、弁護士へ個人再生を依頼する際に、あなたが弁護士に「勤務先に個人再生をすることをどうしても知られたくない」という旨を伝えれば、弁護士からろうきんへ「給与天引きの停止理由を勤め先に開示しないでほしい」と掛け合ってくれることもあります。
個人再生を勤め先に知られずに行ないたい場合は、事前に弁護士にその意志を伝えておきましょう。
「偏頗弁済」によって個人再生後の返済額が高額になる可能性もある
給与天引きによる返済では、もう一点注意すべきことがあります。
それは、知らずのうちに「偏頗弁済(へんぱべんさい)」を行ってしまう可能性があるということです。
偏頗弁済とは、一部のカード会社に偏った返済をしてしまうことです。
個人再生手続きの前後に偏頗弁済が認められると、そのお金は本来借金をしているすべてのカード会社に均等に配当されるべき資産であったとみなされ、偏頗弁済の分だけ個人再生後の返済額(計画弁済額)が高額になってしまう恐れがあります。
もし、ろうきんで借り入れた借金の返済を給与天引きにしており、個人再生の手続き時に給与天引き停止の手続きが遅れてしまうと、ろうきんだけに偏った返済をしているとみなされ、計画弁済額がより高額になってしまう可能性があります。
そのため、弁護士事務所では、個人再生の手続きを行う際、一刻も早く介入通知を送るように心がけています。
ろうきんの口座が凍結される
個人再生を行うと、銀行同様、ろうきんの口座も凍結してしまいます。
口座の凍結とは主に、口座にお金を振り込むことはできても、引き出すことができない状態のことを指します。
銀行やろうきんは、借金が返せなくなり個人再生を行う人に対し、口座を凍結させ、口座に残っている預金を回収することで、少しでも借金と相殺しようとします。
そのため、個人再生によって口座が凍結してしまうと、中に入っている預金は0になってしまいます。
口座が凍結すれば、口座の持ち主であるあなたが預金を引き出せないことはもちろん、家賃や光熱費などの引き落としをろうきんの口座に設定している場合、これらも引き落とせなくなり、そのまま放置していれば滞納してしまいます。
ろうきんから借金をしている人が個人再生を行う際は、事前にろうきんの口座内の預金を引き出しておきましょう。
また、ろうきんの口座を家賃・光熱費・携帯料金などの引き落とし口座に設定している場合、他の銀行の口座に変更しておくか、コンビニ振込など別の支払方法に変更しておくようにしましょう。
マイカーローンをしている場合自動車が没収される
ろうきんでは、自動車購入時にお金を貸し出す「マイカーローン」という商品もあります。
マイカーローンでは、購入した自動車が担保となっており、返済できないとこの自動車をろうきんが没収し、売却することで返済額を回収しようとします。
そのため、マイカーローンを完済していない人が個人再生を行えば、自動車を没収されてしまいます。

ろうきんから借り入れた借金を個人再生するまえに……
これまで述べてきましたように、ろうきんから借り入れた借金が返済できなくなったとき、個人再生などの債務整理を検討するのは有効です。
しかし、これらの債務整理を検討する前に、ろうきん特有の支援制度も視野に入れて検討してみてはいかがでしょうか。
以下では、ろうきんの2つの支援制度についてご説明します。
返済条件を緩和する「勤労者生活支援特別融資制度」
ろうきん特有の支援制度の1つめは、「勤労者生活支援特別融資制度」です。
条件付きではありますが、返済額の減額や元本の据え置き、返済条件の変更などを行ってくれます。
ただし、この制度は会社都合の退職や収入減を理由に、ろうきんの借金が返済困難になった人に向けた制度ですので、誰でも利用できるわけではありません。
必要を感じたら、自分が利用しているろうきんにお問い合わせください。
借金に苦しむ人を支援する「負債整理資金融資制度」
ろうきんではろうきんだけでなく、その他のカード会社からも借金をしている人(多重債務者)を救う目的で「負債整理資金融資制度」を設けています。
この制度では、ろうきんをおまとめローンのように利用する目的で、他のカード会社からの借金をろうきんに借り換えるための融資をしたり、債務整理に必要な弁護士費用を貸し出したり、税金・公共料金の滞納分を支払うためのお金を貸し出したりしてくれます。
ただし、負債整理資金融資制度は、労働組合や生協に加盟している会員の限定サービスです。そのため、これらの会員でない人は利用できないので、ご注意ください。

まとめ
- ろうきんから借り入れた借金も個人再生できる
・ろうきんから借り入れている借金が住宅ローンの場合、対象から除外することも可能
・ろうきんからの借金は利息が低い分、任意整理では解決できない可能性が高い - ろうきんから借り入れた借金を個人再生するときは……
・個人再生が勤務先にバレる可能性が高い
・返済を給与天引きにしている場合、偏頗弁済で計画弁済額が高額になることもある
・ろうきんの口座が凍結するので、事前にお金を引き出しておく
・マイカーローンがある場合、自動車が没収されてしまう - ろうきんから借り入れた借金が返せなくなったら、個人再生より前に検討すべきこと
・返済条件を緩和する「勤労者生活支援特別融資制度」
・借金に苦しむ人を支援する「負債整理資金融資制度」