「保証会社による代位弁済のリスクとは?」
「保証会社による代位弁済後も個人再生は可能か?」
住宅ローンの返済が滞ると、保証会社があなたの代わりにローン会社へ借金を一括清算する代位弁済が行われます。
代位弁済は一見すると、保証会社が借金を肩代わりしてくれるようにも見えますが、実はそんなに甘いものではありません。
保証会社に住宅ローンを代位弁済してもらうと、
- ローンの一括返済を求められる
- 財産が差し押さえられる
- 住宅が競売にかけられる
- 遅延損害金の発生する
- ブラックリストに載る
といった、さまざまなリスクを被ることになります。
したがって、こうしたリスクを回避するための手段を講じる必要が出てくるわけです。
そこで今回は、保証会社による代位弁済のリスクを回避するため、有効な対策を紹介したいと思います。

目次
保証会社による代位弁済
保証会社による代位弁済とは、どのようなものなのか説明します。
代位弁済とは
代位弁済とは、ローンの返済が滞った際、保証会社があなたの代わりにローン会社へ借金を一括清算することです。
ただし、借金を肩代わりした保証会社は、あなたに対して借金返済の要求ができるようになります。
この権利が、「求償権」と呼ばれるものです。
保証会社の代位弁済が行われたことは、代位弁済通知によって知ることができます。
その後、あなたの元に、保証会社から借金返済の督促が送られてくる運びとなるのです。
代位弁済までの流れ
代位弁済は、ローンの返済が滞ったからといって、すぐに実施されるものではありません。
まず、ローンの滞納後、1~3ヶ月程度経過すると、ローン会社から返済の督促状が届きます。
督促状には、期日までに未入金および絵損害遅延金を返済する必要があると書かれているのが一般的です。
そして、ローン滞納から3~6ヶ月程度経過すると、ローン会社から期限利益の喪失予告通知が届きます。
期限利益とは、ローンを分割返済できる権利のことで、これを失った場合、借金を一括返済する義務が発生するという予告が来るのです。
そのため、ローン会社の指定期日までに未入金と損害遅延金を支払う必要があるのですが、これが支払えない場合には、保証会社からあなたの元に代位弁済通知が届きます。
保証会社に住宅ローンを代位弁済してもらった場合のリスク
一見すると、保証会社が借金を肩代わりしてくれるため、あなたにとってメリットしかないように見える代位弁済ですが、実はそうではありません。
保証会社からローンの一括返済を求められる
通常、住宅ローンを組む場合には、25年や35年といった分割払いで返済するのが一般的です。
そして、前述した通り、保証会社の代位弁済が行われると、期限利益を喪失することになるため分割払いができなくなり、ローンを一括返済する必要があります。
しかし、分割払いでのローン返済が滞る状況で、一括返済などできるはずがないため、債務整理(借金問題を法的に解決するための手段)などの手段を講じる必要が出てきます。
財産が差し押さえられる
保証会社による代位弁済後、ローンの一括返済ができない場合、保証会社に財産を差し押さえられることになります。
保証会社は回収した財産を処分し、未回収ローンの補填に充てるのです。
差し押さえられる財産は、預金や現金、車や不動産、保険の解約返戻金などから手取り給与の1/4までもが対象になります。
ただし、保証会社が財産の差し押さえを行うためには、裁判所への申し立てが必要です。
その際、給与が差し押さえられる場合には、裁判所からあなたの勤務先の会社に給与差し押さえの通知が届きます。
したがって、借金をしていることが、会社にバレてしまうことになるのです。
住宅が競売にかけられる
住宅ローンを組む際には、住宅を担保にする抵当権が設定されるのが一般的です。
抵当権とは、ローンの担保になっている住宅を競売にかけ、優先的に借金を回収できる権利となります。
そのため、代位弁済が行われると、対象になった住宅は競売にかけられることになるでしょう。
なお、競売には、以下のようなリスクがあります。
- 住んでいても追い出される
- 一括購入しかできないため、売価が市場相場の5割~7割程度になる
- 引っ越し費用が出ない
- 住宅の買い手を選べない(親戚や知人に優先的に売ったりできない)
- 住宅の情報が官報(政府が発行する新聞のようなもの)に載る
- 売却後、残債がある場合には、一括返済する必要がある
遅延損害金の発生
通常、ローンをはじめとする借金は、返済を延滞すると損害遅延金が発生します。
よって、代位弁済が実施されるまでの損害遅延金が発生するため、借金がさらに増えることになるのです。
ブラックリストに載る
保証会社による代位弁済が行われると、信用情報機関が収集、管理する信用情報に事故情報として登録され、5年程度の期間、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から新たな借入ができなくなる状態になります。
これが、いわゆる「ブラックリストに載った」という状態です。ブラックリストに載ると、以下のようなデメリットが発生します。
- ローンが組めなくなる
- キャッシング、カードローンが利用できなくなる
- 分割払い、リボ払いで買い物できなくなる
- ローンや奨学金の保証人になれなくなる
なお、信用情報とはカード会社とあなたの取引履歴のことで、信用情報機関が適正取引のため収集、管理しています。
保証人に迷惑がかかる
住宅ローンに保証人が付いている場合には、代位弁済後、保証会社は連帯保証人に借金の一括返済を求めます。
そのため、保証人に多大な迷惑をかけることになるでしょう。
したがって、住宅ローンに保証人がいる場合、代位弁済のリスクは相当高くなります。
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代位弁済への対処方法①:個人再生の住宅ローン特則を利用
リスクの大きい代位弁済は、是が非でも回避したいところでしょう。
その有効的な施策の一つが、個人再生の住宅ローン特則を利用することです。
個人再生と住宅ローン特則
個人再生とは、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10まで減額してもらえ、残った借金を原則3年間で返済することができれば、完済扱いにしてもらえる債務整理の1つです。
また、個人再生には、一定の条件を満たすことで、借金を減額してもらいながら住宅ローンの残った自宅を手元に残せる「住宅ローン特則」という制度があります。
したがって、個人再生する際に、住宅ローン特則が利用できれば、住宅ローンの残った自宅を手放す必要はありません。
住宅ローンの巻き戻し
通常であれば、保証会社による住宅ローンの代位弁済が行われてしまうと、ローン会社に対する借金の返済ができなくなります。
そのため、代位弁済が済んだ状態の場合には、個人再生しても住宅ローン特則が適用できないと思われることでしょう。
しかし、保証会社による代位弁済から6ヶ月以内であれば、住宅ローン特則を利用することが可能です。
つまり、保証会社による代位弁済をなかったことにして、住宅ローンを代位弁済前の状態に戻すことができます。
これが、「住宅ローンの巻き戻し」と呼ばれるものです。
住宅ローンの巻き戻しができれば、借金返済を続ける必要はありますが、自宅を手放す必要はなくなります。
また、自宅が競売にかけられている最中であっても、個人再生することができますので、競売をストップさせることも可能です。
代位弁済への対処方法②:住宅の任意売却
代位弁済のリスク回避のもう一つの手段、住宅の任意売却について説明します。
住宅の任意売却とは
住宅の任意売却とは、住宅ローン会社と合意することで、ローンの返済が滞っている住宅を売却することです。
通常、住宅の価格がローン残高よりも少ない場合、残債をローン会社に一括返済する必要があります。
したがって、それが不可能な場合には、住宅の売却はできないことになるのですが、任意売却であれば住宅ローンを残したまま抵当権を抹消することが可能です。
そのため、住宅が差し押さえられ競売にかけられるリスクを回避し、有利な条件で住宅を売却できるようになります。
任意売却のメリット
前述したように、住宅が競売にかけられるとたくさんのデメリットがあります。
しかし、任意売却できると、次のようなメリットがあるのです。
- 買い手から住宅に住み続けられる許可が得られれば住宅を追い出されず、住み続けることが可能
- 競売よりも高額で売却可能
- 最大30万円程度の引っ越し費用が出る可能性がある
- 住宅の買い手を自由に選べる(親戚や友人でもOK)
- 住宅情報が官報に載らない
- 残ったローンを分割払いできる
このように、任意売却には競売で被るリスクをほぼ回避できるというメリットがあります。

まとめ
- 代位弁済とは、ローンの返済が滞った際、保証会社があなたの代わりにローン会社へ借金を一括清算すること
- 保証会社に住宅ローンを代位弁済してもらうと、らローンの一括返済を求められる、財産が差し押さえられる、住宅が競売にかけられる、遅延損害金の発生する、ブラックリストに載るといったリスクがある
- 代位弁済への有効な対処方法は、個人再生して住宅ローン特則を利用、住宅の任意売却という手段がある
- 住宅ローン特則とは、個人再生して借金を減額してもらいながら、住宅ローンの残った自宅を手元に残せる制度
- 住宅の任意売却とは、住宅ローン会社と合意することで、ローンの返済が滞っている住宅を売却すること