「1,500万円の借金は個人再生でいくらになるのか?」
「個人再生で1,500万円の借金はどうなるのか?」
1,500万円にまで膨らんでしまった借金を、そのまま返済するのは非常に困難です。
消費者金融などから借金をすると、金利は一般的に18%程度になります。
そのため、3年で返済しようとすると、毎月50万円以上の返済が必要です。
もちろん、「このくらいの金額大したことないぜ!」という人であれば全く問題ありませんが、そのような人は非常に少ないと思います。
しかし、一般の人でも、1,500万円の借金を返済できる方法があるんです。
それが、借金を法的に解決する手続きである債務整理のひとつ「個人再生」になります。
個人再生とは、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえ、残った借金を原則3年間(最大5年間)で返済できれば完済扱いにしてもらえるという手続きです。
1,500万円の借金を個人再生すると、最大で1/5の300万円まで減額してもらえる可能性がありますので、毎月8万円程度を3年間返済できれば完済することができます。
最初の返済額である50万円と比べれば、何とか完済できる希望が見えてきたのではないでしょうか?
そこで今回は、1,500万円の借金を個人再生するとどうなるのか、他の借金整理の方法とも比較しながら、詳しく解説していきたいと思います。

目次
1,500万円の借金返済は非常に困難
1,500万円という借金をそのまま返済しようとする行為が、どれほど無謀なことなのか確認していきたいと思います。
3年で完済しようとした場合
以下のような複数のカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から借りた1,500万円の借金を、3年間(36ヶ月)で返済しようとすると、
・アコム(約800万円・月々289,219円の返済・利息:2,411,890円)
・プロミス(約360万円・月々130,149円の返済・利息:1,085,350円)
・モビット(約250万円・月々90,381円の返済・利息:753,716円)
・JCBカード(約90万円・月々32,537円の返済・利息:271,338円)
ということで、
・返済回数:36 回
・毎月の返済額:542,286円
・返済総額 :19,522,294円
・利息:4,522,294円
という試算結果です。
利息が合計で450万円以上発生するため、かなり負担が大きくなります。
いちおう、毎月約54万円を3年間返済できれば完済できますが、一般の人には無理な金額といえるでしょう。
5年で完済しようとした場合
3年返済は無謀でしたが、5年間(60ヶ月)ではどうなるか見てみましょう。
・アコム(約800万円・月々203,147円の返済・利息:4,188,845円)
・プロミス(約360万円・月々91,416円の返済・利息:1,884,980円)
・モビット(約250万円・月々63,484円の返済・利息:1,309,014円)
・JCBカード(約90万円・月々22,854円の返済・利息:471,245円)
という結果になるため、
・返済回数:60 回
・毎月の返済額:380,901円
・返済総額 :22,854,084円
・利息:7,854,084円
となります。
先ほどより、毎月の返済額は減りますが、それでも毎月38万円程度必要で、利息はなんと約785万円になります。
したがって、1,500万円の借金を普通に返済するのは無謀といえるのです。

1,500万円の借金は個人再生で減額してから返済するのがベター
では、1,500万円の借金を個人再生すると、どのくらい減額されるのか説明します。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえ、減額された原則3年間で返済できれば、完済扱いにしてもらえる債務整理の一つです。
個人再生すると、借金の元本自体が大幅に圧縮されます。
そのため、返済の負担が大きく減らせる点が、個人再生最大のメリットといえるのです。
さらに、個人再生には、「住宅ローン特則」と呼ばれる、住宅ローンが残った自宅を手元に残しながら借金を減額してもらえる制度も利用できます。
ただし、小規模個人再生を裁判所に認可してもらうためには、過半数以上のカード会社による同意と、借金の過半数を有するカード会社による同意が必要となるため、このハードルを越えられないと個人再生することはできません。
個人再生の最大減額率:最低弁済額
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続きがあります
まず、小規模個人再生は、個人再生するほとんどの人が行う手続きで、給与所得者等再生に比べ借金の減額率が大きい点が特徴です。小規模個人再生すると、
・最低弁済額
・清算価値
のどちらか多い方を返済する必要があります。
最低弁済額とは、借金額に応じて決められた減額率で、個人再生における最大の減額率です。
借金額に応じた減額率は次のようになっています。
したがって、1,500万円の借金を個人再生すると、1/5の300万円まで減額されるため、毎月約8,3万円を3年間返済できれば、完済扱いにしてもらえるのです!
ただし、最低弁済額は、以下で説明する「清算価値」や「2年分の可処分所得額」の金額によっては、減額率が下がる可能性もあります。
清算価値が多いと最低弁済額が上がる
先ほど説明した通り、小規模個人再生では、最低弁済額と清算価値のどちらか多い方を支払う必要があります。そのため、
清算価値 > 最低弁済額
となった場合には、最低弁済額が清算価値と同じ金額まで引き上げられるのです。
このとき引き上げられた最低弁済額のことを「計画弁済額」と呼びます。
なお、清算価値とは、あなたが自己破産した際、保有している財産を処分しカード会社に分配するのと同じ金額のことです。
たとえば、
借金額:1,500万円
清算価値:400万円
という人が小規模個人再生した場合には、
最低弁済額:300 万円 < 清算価値:400万円
ということで、計画弁済額は400万円になります。
したがって、清算価値(財産)を多く持つ人が小規模個人再生すると、個人再生後に支払う借金が増える可能性があるのです。
可処分所得額が多いと最低弁済額が上がる
もうひとつの手続きである給与所得者再は、サラリーマンなど、給与所得の人を対象に整備された手続きです。
しかし、
・申し立てのハードルが小規模個人再生に比べ高い
・借金減額率が小規模個人再生より低い
ことから、現在ではそれほど利用されません。
しかし、給与所得者等再生には、小規模個人再生のようなカード会社の同意が必要ないため、小規模個人再生できない人が、給与所得者等再生で手続きを行う場合があるのです。
給与所得者等再生で手続きを行うと、
・最低弁済額
・清算価値
・2年分の可処分所得額
うち最も多いものを支払う必要があります。
可処分所得額とは、給料から税金や家賃、保険代、光熱費、食費、生活費などを抜いた金額のことです。
たとえば、月収55万円の人が、
・税金:7万円/月
・家賃:13万円円/月
・光熱費:3万円/月
・食費:6万円/月
・その他:6万円/月
という生活をしている場合、可処分所得額は
55万円–(7万円+13万円+3万円+6万円+6万円)=20万円
よって、2年分の可処分所得額は、
20万円 ×24ヶ月 =480万円です。
したがって、
・借金:1,500万円
・清算価値:400万円
・2年分の可処分所得額:480万円
という人が給与所得者再生した場合には、
・最低弁済額:300 万円 < 清算価値:400万円 <2年分の可処分所得額:480万円
となるため、
・計画弁済額:480万円
・返済回数:36回
・毎月の返済額:13,3万円
という結果になります。
つまり、可処分所得額が多い人が給与所得者等再生すると、最低弁済額以上の金額を支払わなくてはならない可能性が高いのです。
⇒小規模個人再生について詳しくはこちら
⇒給与所得者再生について詳しくはこちら
個人再生のデメリット
個人再生にはいくつかデメリットもありますので、これから個人再生する人は、そのリスクを認識しておきましょう。
特定の借金だけを整理対象から外せない
個人再生には、「債権者平等の法則」と呼ばれる、全てのカード会社を平等に扱わなくてはいけないというルールがあります。
そのため、原則として全ての借金が整理対象です。
よって、特定の借金だけを個人再生の整理対象から外すことはできません。
たとえば、自動車ローン返済中の車だけを個人再生の整理対象から外すことはできないため、車は没収されることになります。
ブラックリストに載る
次に、個人再生すると信用情報機関(カード会社と顧客の適正取引のために活動する機関で、信用情報の収集、管理を行っている)が管理する信用情報(カード会社と顧客の取引情報のことで、債務整理した事実なども記録されたもの)に事故情報として登録されるため、5年から10年程度の期間、カード会社から新たな借入ができなくなります。
これが、俗に言う「ブラックリストに載る」と呼ばれる状態です。
ブラックリストに載ると、次のようなデメリットがあります。
・カードの新規発行、利用ができない
・ローンの利用ができない
・キャッシングが利用できない
・リボ払いや分割払いが利用できない
・ローンや奨学金の保証人になれない
官報に載る
個人再生すると「官報」と呼ばれる政府が発行する新聞のようなものに、あなたの住所、氏名、個人再生した事実などが掲載されます。
ただし、官報は、一般の人が目にする機会は非常に低いため、知人や会社にバレる可能性は低いでしょう。
同居した家族に個人再生したことがバレやすい
個人再生を裁判所に申し立てする場合には、あなたの経済状況を申告する必要があるため、給与明細や家計簿を提出しなくてはいけません。
また、同居する家族に収入がある場合には、そちらの給与明細も提出する必要があります。
したがって、そうした書類を入手する際、家族に内緒にしておくことが困難なため、個人再生したことが家族にバレやすくなるのです。

個人再生以外の方法で1,500万円の借金整理にチャレンジ
次は、個人再生以外の方法で、1,500万円の借金を整理した場合についても紹介します。
おまとめローン
「おまとめローン」とは、複数の借金を一つのローンとしてまとめられるサービスです。
おまとめローンの金利は、消費者金融などの金利よりも低めに設定されています。
そのため、おまとめローンにすることで、返済の負担を大きく減らせるというメリットがあるのです。
1,500万円の借金をおまとめローンにすると、
・返済回数:36 回
・毎月の返済額:446,204円
・返済総額 :16,063,339円
・利息:1,063,339円
(金利:実質年率4.5% )
となります。
よって、利息はかなり抑えられる形となりますが、毎月約45万円を返済する必要があるため、現実的ではないのです。
また、おまとめローンを組む場合には、ローン審査もあります。
1,500万円の借金を持つ人が、ローン審査に通過するのは、一般的に考えてかなり厳しいでしょう。
したがって、1,500万円の借金をおまとめローンで返済するのは困難です。
任意整理
任意整理とは、カード会社に任意の交渉に応じてもらうことで、将来的に発生する利息をカットし、3年~5年程度の分割払いにできるよう和解する債務整理のひとつです。
1,500万円の借金を、任意整理して3年間で返済しようとした場合、
・返済回数:36 回
・毎月の返済額:約416,667円
・返済総額 :1,500万円
・利息:0円
利息はゼロになりますが、毎月の返済額は42万円ほどあるため、返済するのは困難でしょう。
ちなみに、カード会社との交渉がうまくいき、5年返済で合意できた場合には、
・返済回数:60回
・毎月の返済額:25万円
となるため、一瞬ものすごく返済額は下がったように見えますが、先程の価格で金銭感覚がおかしくなっている可能性があるため、もう一度冷静に見てみましょう。
毎月25万円の返済が5年間続くのです。
一般の人にとって、これは非常に厳しい条件といえるでしょう。
このように、任意整理には、個人再生と違い借金の元本自体が一切減額されないため、借金額が多い場合には、返済額も多くなり、そもそも利用できない可能性があります。
したがって、1,500万円の借金を任意整理で解決するのは非常に困難です。
自己破産
最後に、自己破産した場合についても紹介しておきます。
自己破産とは、裁判所に申し立てることで、借金を免責(チャラにする)してもらえる債務整理のひとつです。
1,500万円の借金を自己破産して裁判所に免責を認めてもらえれば、借金はゼロになります。
しかし、その反面、申し立ての条件が厳しいことや、以下のようなデメリットもありますので、個人再生に比べリスクが高い手続きといえるのです。
・5年~10年程度の期間、ブラックリストに載る
・ほぼ全ての財産が没収される.
・職業・資格が制限される (士業など資格が必要な職業につけない期間がある)
・官報に載る
・「免責不許可事由」と呼ばれる、免責対象外になる借金の条件が存在する(浪費やギャンブルなどの借金は原則NGなど)
さらに、「自己破産した」というネガティブイメージが一生付きまとう点も、多くの人が自己破産を避ける大きな理由になっています。
ちなみに、個人再生では借金の理由は不問とされていますので、原則としてどのような借金でも整理対象にすることが可能です。
1,500万円の借金を個人再生した事例
最後に、1,500万円の借金を個人再生した例を、いくつか紹介しておきたい思います。
Aさん(小規模個人再生):借金額1,500万円・清算価値:0円
浪費を繰り返すうちに1,500万円という借金を背負ってしまったAさん。
どうにもならなくなり、弁護士に相談して自己破産しようとしたところ、個人再生をすすめられたそうです。
そして、Aさんは1,500万円の借金を、小規模個人再生することにしました。
その結果、
・返済回数:36回
・返済総額 :1,500万円 ⇒ 300 万円
・毎月の返済額:約54,2万円 ⇒ 約8,3万円
と、借金の大幅減額に成功しました。
Aさんには、主だった財産がなかったため、最大の1/5まで借金が減額されました。
今回は、非常にラッキーだったといえるでしょう。
Bさん(小規模個人再生):借金額1,500万円・清算価値250万円円・住宅ローン13万円
事業に失敗して1,500万円の借金を背負ってしまったBさんが選んだのは、小規模個人再生という方法でした。
また、自宅を手放したくなかったBさんは、住宅ローン特則の利用も希望されました。
Bさんが小規模個人再生した結果、
・返済回数:36回
・返済総額 :1500万円 ⇒ 300 万円
・毎月の返済額:約54,2万円(借金) + 13万円(住宅ローン) = 約67,2万円
⇒ 約8,3万円+13万円=21,3万円
借金を減額しながら自宅を手元に残すことに成功しました。
さらに、Bさんは、タイミングを見て、清算価値も処分して借金の返済に充てるとおっしゃっていました。
Cさん(給与所得者等再生):借金額1,500万円・清算価値:0円・可処分所得額15万円/月
1,500万円の借金を小規模個人再生しようとしたCさんは、カード会社から反対されたため個人再生に失敗してしまいました。
困り果てて、弁護士に相談したところ、給与所得者等再生であればカード会社の同意が必要ないということから、こちらで再度、個人再生の手続きを行うことにしたのです。
その結果、
・返済回数:36回
・返済総額:1,500万円 ⇒ 360万円
・月返済額:約54.2万円 ⇒ 10万円
最低弁済額である300万円よりも若干返済額が増えてしまいましたが、1,500万円の借金を1/5程度まで無事減額できました。
⇒個人再生の費用相場はいくら?裁判費用と弁護士費用の2種類存在
⇒個人再生による奨学金の扱いは?
⇒知人からの借金も個人再生の対象になるのか?

まとめ
- 1,500万円の借金を3年間で返済しようとした場合には、合計で4,522,294円の利息を支払う必要がある
- 1,500万円の借金を5年返済にした場合、合計で7,854,084円の利息を支払う必要があるため、3年返済と比べかなり負担が増えることになる
- 1,500万円の借金を個人再生すると、最低弁済額は300 万円になるため、毎月約8,3万円を36回(3年間)で返済できれば借金を完済扱いとなる
- 1,500万円の借金をおまとめローンにして3年間で返済しようとした場合には、利息は1,063,339円まで下がるが、毎月約45万円を返済する必要があるため完済するのは困難
- 1,500万円の借金を任意整理すると、利息はカットされるが、毎月約42万円を3年間返済し続ける必要があるため、完済するのは困難
- 1,500万円の借金を自己破産できれば借金はゼロになるが、リスクが高い
- 300 万円以上の財産を持っている人が1,500万円の借金を個人再生しても、計画弁済額は300 万円以上になるため減額率は減る
- 住宅ローン特則を使えば、借金を減額してもらいつつマイホームを残すことができる