「600万円の借金は個人再生でいくらになるのか?」
「個人再生で600万円の借金はいくら減るのか?」
複数のカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)からの借金が積もり積もって、気が付いたら600万円の借金を抱えてしまったという場合、あなたならどうしますか?
600万円の借金を消費者金融などから借りた場合、これを3年間で完済しようとすると毎月約27万円の支払いが必要です。
「この程度の金額なら全然問題ない!」という人であれば、そのまま返済するのもよいでしょう。
しかし、一般の人で毎月22万円借金を返済できる人は、それほど多くないと思われます。
そこで、おすすめしたいのが、債務整理(借金問題を法的に解決する手続き)の1つである個人再生です。
個人再生は、裁判所に申し立てすることで、借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえる手続きで、600万円の借金であれば最大120万円まで減額してもらえる可能性があります。
600万円もの借金が120万円まで減るなんて、夢のようですよね?
今回は、債務整理を検討されている人に向け、600万円の借金を個人再生するとどうなるのか紹介したいと思います。

目次
600万円という借金の重さを知ろう
まず、600万円がどの程度の借金なのか知っておきましょう。
日本の平均年収
現在、日本の平均年収は400万円~450万円程度となっています。
また、平均年収の人が支払う税金(住民税、所得税)は30~40万円程度ですので、それを差っ引くと、実質的な給料は370万円~410万円程度といえるでしょう。
このことから、年収をはるかに超える600万円の借金は、普通に返済するのが非常に困難ということが分かります。
返済能力とは
さらに、税金以外にも毎月、
- 家賃や住宅ローン
- 食費
- 光熱費
- 保険費
といった費用が発生するため、自由に使えるお金はさらに減り、大体50万円から多くても100万円程度になると思われます。
また、独身の場合と家庭を持っている場合では、かなり条件が異なってきます。つまり、借金の返済能力は、あくまでもその人の収入と支出のバランスで決まるのです。
つまり、
返済能力 = 収入-支出(最低限の生活費)
となるのです。
したがって、収入が多くても支出が多ければ、借金の返済は困難になります。
よって、年収が平均よりも多いからといって、必ずしも借金を楽に返済できるわけではないのです。
返済能力で異なる借金問題の解決方法
借金の返済方法は、その人の返済能力によって異なります。
600万円の借金を、さまざまな方法で返済するとどうなるのかみてみましょう。
600万円の借金を3年間で返済した場合
以下のような、消費者金融などから借りた600万円の借金を3年(36ヶ月)で返済しようとすると、
- レイク(190万円・月々68,690円の返済・利息:572,824円)
- モビット(160万円・月々57,844円の返済・利息:482,378円)
- オリコ(250万円・月々90,381円の返済・利息:753,716円)
という試算結果になります。
よって、毎月約22万円を返済していく必要があるため、一般の人にはかなり厳しいでしょう。
また、利息は約180万円も発生するため、非常に大きな負担になるかと思います。
したがって、600万円の借金を返済するのは非常に厳しいため、なんとか負担を減らしたいところですよね。
5年返済ではどうなるのか?
返済期間を5年に延ばせば、毎月の返済は若干下がると思います。
そこで、600万円の借金を5年間で返済した場合も見てみましょう。
- レイク(190万円・月々48,248円の返済・利息:994,851円)
- モビット(160万円・月々40,629円の返済・利息:837,769円)
- オリコ(250万円・月々63,484円の返済・利息:1,309,014円)
このように、毎月の返済額は約15万円まで下がりますが、利息が約310万円と大幅に上ってしまうのです。
したがって、毎月の返済額だけでなく、利息を減らす方法も検討する必要があります。
おまとめローンを使うとどうなるのか?
複数のカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)の借金を一つにまとめられる「おまとめローン」というサービスがあります。
おまとめローンの金利は、消費者金融のものよりも安いため、返済の負担を大きく減らすことができます。
600万円の借金を、おまとめローンにして3年間で返済しようとした場合、
- 返済回数:36 回
- 毎月の返済額:178,482円
- 返済総額 :6,425,336円
- 利息:425,336円
(金利:実質年率4.5% )
という試算になり、先程よりも利息が
1,808,917円 -425,336円 =1,383,581円
ということで、約140万円も減らせます。
ただし、毎月18万円程度の返済を3年間続ける必要があるため、まだまだ返済のハードルは高いと言わざるを得ないでしょう。
また、おまとめローンには審査がありますので、それを通過することが必須条件です。
ただし、600万円の借金を抱えた状態でローンの審査をクリアするのは、相当厳しいと思われます。
以上のことから、一般の人が債務整理以外の方法で、600万円の借金を完済しようとするのは、かなり厳しいのです。

600万円の借金を任意整理
任意整理であれば、借金の利息をカットすることができるため、返済の負担をかなり減らせます。
任意整理とは
任意整理とは、カード会社に任意の交渉に応じてもらうことで将来的に発生する利息をカットし、3年~5年程度の分割払いにしてもらえるよう和解してもらう手続きです。
利息がカットされ返済期間が調整できるため、借金返済の負担が大きく下がるのが、任意整理の最大のメリットといえるでしょう。
さらに、任意整理では、整理する借金の対象を自由に選択できます。たとえば、
- 自動車ローン返済中の車
- 保証人付きの借金
などを除外して借金を整理すれば、車を手元に残せますし、連帯保証人に迷惑をかけることなく債務整理できるのです。
任意整理にはデメリットもある
任意整理には、以下のようなデメリットがあります。
- 借金の元本自体は減らせない
- ブラックリストに載る
任意整理では利息はカットできますが、借金の元本自体は一切減額されません。
したがって、借金が多すぎる場合には、返済が困難になるため利用できないのです。
また、任意整理すると、信用情報機関と呼ばれる、カード会社と顧客が適正に取り引きができるよう活動をしている機関が収集する信用情報(カード会社と顧客の取引情報や債務整理の記録)に事故情報として登録されるため、約5年間カード会社から新たな借入ができなくなります。
これが、いわゆる、「ブラックリストに載った」と言われる状態です。
ブラックリストに載ると、
- カードの新規発行、利用ができなくなる
- ローンが組めなくなる
- キャッシングができなくなる
- リボ払い、分割払いができなくなる
といったデメリットが生じます。
600万円の借金を任意整理した結果
600万円の借金を、任意整理して3年で返済する場合には、
- 返済回数:36 回
- 毎月の返済額:約166,667円
- 返済総額 :6,000,000円
- 利息:0円
となるため、毎月約17万円の返済が必要です。
ただし、カード会社と5年返済で合意できた場合には、
- 返済回数:60回
- 毎月の返済額:約100,000円
- 返済総額 :6,000,000円
- 利息:0円
となるため、毎月10万円を5年間返済し続けられる人であれば、600万円の借金を任意整理するのもよいでしょう。
600万円の借金を個人再生するとどうなるのか
600万円の借金を、個人再生した場合について紹介します。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえ、残りを原則3年間で返済できれば完済扱いにしてもらえる債務整理の一つです。
ただし、個人再生の対象になるのは、5,000万円以下の借金のみとなります。
また、住宅ローンは、借金に含みません。なお、個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2つの手続きがあり、それぞれ申し立て条件や借金減額率が異なるため、弁護士や司法書士と相談して、あなたにとって最適な手続きを選択する必要があります。
また、個人再生には「住宅ローン特則」と呼ばれる、住宅ローンが残った自宅を手元に残しつつ借金を減額してもらえる手続きもあります。
住宅ローンに苦しむサラリーマンに個人再生の利用者が多いのは、住宅ローン特則が利用できることが理由の1つと言えるでしょう。
個人再生における最大減額率「最低弁済額」
個人再生における最大のメリットは、借金が大幅に減額されることです。
個人再生の借金減額率で最大のものが「最低弁済額」と呼ばれ、借金の大きさ応じて以下のように規定されています。
したがって、600万円の借金を個人再生すると1/5の120万円まで減額してもらえ、これを原則3年間(最大5年まで延長可能)で返済していくことになるのです。
つまり、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約33,333円
- 返済総額 :1,200,000円
- 利息:0円
という結果になるため、毎月約3.3万円を3年間返済し続けられれば、借金を完済扱いにしてもらえるわけです。
ただし、最低弁済額はあくまでも個人再生における“最大”の減額率となるため、以下で説明する「清算価値」と「2年分の可処分所得額」の金額によっては、減額率が下がる可能性もあります。
清算価値(財産)が多い場合
前述した通り、個人再生すると借金を大幅に減額してもらえます。
しかし、その代わりに、あなたが持つ財産以上の金額と同等以上の金額については、最低限返済しなくてはいけないというルールがあるのです。
これを個人再生では、「清算価値保証の原則」と呼びます。
したがって、清算価値(財産)を多く持っている人が個人再生すると、借金の減額率が下がってしまう可能性があります。
小規模個人再生で個人再生すると、
- 最低弁済額
- 清算価値
のいずれか多い方を支払わなくてはなりません。
そのため、借金が600万円でも、180万円の財産を保有していた場合には、
最低弁済額:120万円 < 清算価値:180万円
となるため、最低弁済額が150万円まで引き上げられます。
したがって、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:50,000円
- 返済総額 :1,800,000円
- 利息:0円
ということで、毎月5万円を3年間支払えれば、借金を完済扱いにしてもらえるというわけです。
なお、このとき引き上げられた最低弁済額を、「計画弁済額」と呼びます。
給与所得者等再生で可処分所得額が多い場合
個人再生のもうひとつの手続きである給与所得者等再生では、
- 最低弁済額
- 清算価値
- 2年分の可処分所得額
の中から最も多い金額を支払う必要があります。
可処分所得額とは、毎月の給料から税金や家賃、保険代や光熱費、食費、生活費などを抜いた金額のことです。
たとえば、平均年収の430万円という人の場合、
- 給与:26万円/月
- 税金:2万円/月
- 家賃:8万円/月
- 光熱費:2万円/月
- 食費:4万円/月
- その他:2万円/月
などを引いた金額となるため、可処分所得額は
26万円 -(2万円+8万円+2万円+4万円+3万円)=7万円/月
程度となり、2年分の可処分所得額は、
7万円 ×24ヶ月 =168万円
となるのです。
よって、借金が600万円で、年分の可処分所得額が168万円の人が給与所得者再生すると、
最低弁済額:120万円 <2年分の可処分所得額:168万円
となるため、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約46,667円
- 返済総額 :1,680,000円
- 利息:0円
という結果になるのです。
このように、毎月の手取り給料が多い人が給与所得者等再生で手続きを行う場合には、個人再生の借金減額率が少なくなる可能性が高くなります。
個人再生のデメリット
個人再生には、次のようなデメリットがあるため、あらかじめ認識しておきましょう。
- 借金の整理対象が選べない
- ブラックリストに載る
- 官報に載る
- 同居した家族がいる場合、個人再生したことがバレやすい
個人再生では、任意整理のように借金の整理対象が選べません。
したがって、全ての借金が整理対象になるため、
- 自動車ローン返済中の車やバイクを手元に残したい
- 保証人付きの借金がある
という人は、個人再生はおすすめできません。
また、個人再生するとブラックリストに載ってしまうのですが、任意整理に比べ事故情報の掲載期間が5年~10年間と長くなります。
そして、個人再生は裁判所を介する手続きになるため、官報(政府が発行する新聞のようなもの)に名前や住所、個人再生した事実などが掲載されてしまいます。
さらに、個人再生は同居した家族にバレずに手続きを行うのが困難というデメリットもあります。
⇒個人再生のデメリットは8つだけ押さえておけば大丈夫!!
⇒個人再生しても車を残しておくための6つの方法

600万円の借金を個人再生した事例
最後に、400万円の借金を個人再生した事例を、いくつか紹介したいと思います。
Aさん(小規模個人再生):借金額600万円・清算価値:50万円
毎月の返済額が22万円程度の返済を続けていたAさんは、借金問題を解決するため小規模個人再生をすることにしました。
その結果、
- 最低弁済額:120万円
- 清算価値:50万円
- 返済回数:36回
- 月返済額:43,200円
となりました。
Aさんの財産は50万円程度と最低弁済額以下だったため、最大の120万円まで圧縮された借金を、3年間で返済してもらえるよう調整できました。
毎月の返済負担は約1/5まで圧縮され、返済の負担を大きく下げることに成功したのです。
Bさん(小規模個人再生):借金額600万円・清算価値なし・住宅ローン12万
Bさんは、毎月の返済が住宅ローンの返済と合わせて34万円(住宅ローン:12万/月、借金返済額:22万/月)もあったため、個人再生に踏み切ることにしました。
しかし、Bさんは自宅をどうしても手放したくなかったため、住宅ローン特則を利用して小規模個人再生を実施したのです。
その結果、
- 最低弁済額:120万円
- 清算価値:0円
- 返済回数:36回
- 住宅ローン:減額なし、返済額120,000円/月
- 月返済額:43,200円+120,000円=163,200円
となり、借金の負担を大きく減らしつつ、自宅を残すことに成功しました。
Cさん(給与所得者等再生):借金額600万円・清算価値:80万円・可処分所得額10万円/月
小規模個人再生を実施した際、カード会社から反対されてしまったCさんは、給与所得者等再生で、再度個人再生することになりました。
その結果、
- 最低弁済額:120万円
- 清算価値:80万円
- 2年分の可処分所得額:10万円/月 ×24ヶ月 = 240万円
- 計画弁済額:240万円
- 返済回数:36回
- 月返済額:約66,667万円
となり、個人再生後の返済が小規模個人再生の倍くらいになってしまいましたが、600万円あった借金を大幅に減らすことに成功しました。
Cさんのように収入が多い人の場合には、小規模個人再生する際、最低弁済額よりも多い金額を返済する姿勢をみせないと、カード会社から反対される可能性もあるのです。
このような場合には、弁護士や司法書士といった専門家に相談して、適正な方法で申したてするべきでしょう。
⇒個人再生の費用相場はいくら?裁判費用と弁護士費用の2種類存在
⇒個人再生の手続きの流れ/裁判所を介する個人再生の手続きは大変?

まとめ
- 600万円の借金を3年間で返済しようとした場合には、合計で約180円の利息を支払う必要がある
- 600万円の借金を5年返済にすると、約310万円の利息が発生するため、3年返済に比べかなり負担が増える
- 600万円の借金を個人再生すると、最低弁済額は120万円になるため、毎月約33,333円を36回(3年間)で返済できれば借金を完済扱いとなる
- 600万円の借金をおまとめローンにして3年間で返済しようとした場合には、利息は425,336円/月まで下がるが、毎月18万円程度返済する必要がある
- 600万円の借金を任意整理すると、利息はカットされるが、毎月約17万円を3年間返済し続ける必要がある
- 120万円以上の財産を持っている人が600万円の借金を個人再生しても、計画弁済額は120万円以上になるため減額率は減る
- 住宅ローン特則を使えば、借金を減額してもらいつつマイホームを残すことができる