「700万円の借金は個人再生でいくらになるのか?」
「個人再生で700万円の借金はいくら減るのか?」
消費者金融などからの借入を繰り返した結果、700万円まで膨れ上がった借金は、毎月約25万円の返済を3年間継続すれば完済可能です。
しかし、一般の人には、とても返済できる金額ではないと思われます。したがって、何らかの手段を講じる必要が出てくるでしょう。
そこで、おすすめしたいのが、借金問題を法的に解決する手続きである債務整理の1つ「個人再生」です。
700万円の借金を個人再生すると、最大で1/5の140万円まで減額してもらえる可能性があります。
ただし、あなたが所有する財産や年収などに応じて、借金の減額率が減る場合もあるため、弁護士や司法書士といった専門家に相談して、あなたにとって最適な方法で手続きを進める必要があるのです。
そこで今回は、債務整理を検討されている人に向け、700万円の借金には個人再生がおすすめな理由について解説したいと思います。

目次
700万円の借金をそのまま返済するとどうなるのか
まず、700万円という借金を、そのまま返済し続けるとどうなるのか知っておきましょう。
3年で返済する場合
たとえば、以下のような700万円の借金を、3年(36ヶ月)で返済しようとすると、
- アイフル(約180万円・65,074月々円の返済・利息:542,675円)
- みずほ銀行(約400万円・月々144,610円の返済・利息:1,205,945円)
- 楽天カード(約120万円・月々43,383円の返済・利息:361,783円)
となるため、
- 返済回数:36 回
- 毎月の返済額:253,067円
- 返済総額 :9,110,403円
- 利息:2,110,403円
となります。
よって、毎月25万円程度を返済していく必要があることに加え、合計で2,110,403円という利息が発生してしまうため、かなり厳しい状況といえるでしょう。
5年返済にすると……
毎月の返済金額が約25万円というのは、さすがに厳し過ぎるので、5年返済でもシミュレートしてみましょう。
- アイフル(約180万円・月々45,708円の返済・利息:942,490円)
- みずほ銀行(約400万円・月々101,574円の返済・利息:2,094,423)
- 楽天カード(約120万円・月々30,472円の返済・利息:628,327円)
つまり、
- 返済回数:60 回
- 毎月の返済額:177,754円
- 返済総額 :10,665,240円
- 利息:3,665,240円
という結果なります。
よって、毎月の返済は「約25万円⇒約18万円」と減るのですが、利息が360万円以上、返済総額は1,000万円越えというショッキングな結果になってしまうのです。
ここはやはり、もっと返済の負担を減らしたいところでしょう。
おまとめローンを使うとどうなるのか
次に、複数の借金をおまとめローンで1つにした場合、どうなるのか確認してみましょう。
おまとめローンとは
「おまとめローン」とは、複数のカード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)から借りた借金を一つにまとめられるというサービスです。
おまとめローンの金利は、消費者金融のものより安いため、借金を1つにまとめることで利息が減り、返済の負担を大きく減らせるというメリットがあります。
700万円の借金をおまとめローンした結果
700万円の借金を、おまとめローンにして3年間で返済しようとした場合、
- 返済回数:36 回
- 毎月の返済額:208,228円
- 返済総額 :7,496,225円
- 利息:496,225円
(金利:実質年率4.5% )
という試算になり、そのまま返済した場合と比べると
- 毎月の返済額:253,067円 ⇒208,228円
- 返済総額 :9,110,404円 ⇒7,496,225円
- 利息:2,110,404円 ⇒496,225円
ということで、毎月の返済金額と比べて、特に利息が大幅に下がることが分かると思います。
ただし、毎月21万円程度の返済を3年間続ける必要があるため、まだまだ返済のハードルは高いと言わざるを得ないでしょう。
さらに、おまとめローンには審査があるのですが、700万円の借金を抱えた状態でローンの審査をクリアするのは恐らく厳しいと思われます。
したがって、一般の人が債務整理以外の方法で、700万円の借金を完済しようとするのは非常に困難なのです。
700万円の借金を任意整理するとどうなるのか?
次に、700万円の借金を任意整理するとどうなるのか説明します。
任意整理とは
任意整理とは、カード会社に任意の交渉に応じてもらうことで将来的に発生する利息をカットし、3年~5年程度の分割払いにしてもらえるよう和解してもらう手続きです。
また、任意整理では、整理する借金の対象を自由に選択できるため、
- 自動車ローン返済中の車は残したい
- 保証人付きの借金があるので整理対象から外したい
という場合には、これらを除外して手続きすることも可能です。
任意整理最大のメリット
700万円の借金を、任意整理して3年で返済する場合には、
- 返済回数:36 回
- 毎月の返済額:約194,444円
- 返済総額 :7,000,000円
- 利息:0円
となるため、毎月約19.5万円の返済が必要ですが、利息はゼロになります。
これが、任意整理最大のメリットといえるでしょう。そして、これを先ほどのおまとめローンの試算結果と比較すると、
- 毎月の返済額: 208,228円⇒ 約194,444円
- 返済総額 :7,496,225円⇒7,000,000円
- 利息: 496,225円⇒0円
毎月の返済金額も若干下がっていることが分かると思います。
また、カード会社との交渉によっては、返済期間を5年にしてもらえる可能性もあるでしょう。
その場合には、
- 返済回数:60回
- 毎月の返済額:約116,667円
- 返済総額 :6,000,000円
- 利息:0円
という試算になるため、毎月の返済金額は約12万円となり、最初の状況と比べるとかなり改善されたことが分かと思います。
しかし、それでも毎月10万円以上の借金返済を5年間継続するのは、なかなか困難です。
任意整理のデメリット
将来的に発生する利息がゼロになるという大きなメリットのある任意整理ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 借金の元本自体は減らせない
- ブラックリストに載る
前述した通り、任意整理では借金の利息はカットできます。
しかし、借金の元本自体は一切減額されません。よって、借金額が多すぎる場合には、利用できない可能性があるのです。
また、任意整理すると、信用情報機関が収集、管理する信用情報(カード会社と顧客の取引情報や債務整理の記録)に事故情報として登録されるため、約5年間カード会社から新たな借入ができなくなります。
これが、いわゆる、「ブラックリストに載った」と言われる状態です。なお、信用情報機関とは、カード会社と顧客が適正に取引できるように活動している機関となります。
ブラックリストに載ると、
- カードの新規発行、利用ができなくなる
- キャッシングができなくなる
- リボ払い、分割払いができなくなる
- ローンが組めなくなる
といったデメリットが発生しますので、任意整理を検討する人は認識しておきましょう。

700万円の借金は個人再生で大幅に減らせる
では、いよいよ700万円の借金を個人再生した場合について説明します。
個人再生のメリット
個人再生とは、裁判所に申し立てすることで借金を1/5~1/10程度まで減額してもらえ、残りを原則3年間で返済できれば完済扱いにしてもらえる債務整理の一つです。
個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」という2つの手続きがありますが、ほとんどの人が小規模個人再生で手続きを行います。
さらに、個人再生には「住宅ローン特則」と呼ばれる、住宅ローンが残った自宅を手元に残しつつ借金を減額してもらえる手続きもあります。
なお、個人再生の対象になるのは、5,000万円以下(住宅ローンは除く)の個人の借金だけが対象です。
このように、個人再生のメリットは、借金を大幅に減額できることだといえるでしょう。
700万円の借金を小規模個人再生した場合
小規模個人再生で手続きをした場合には、
- 最低弁済額
- 清算価値
のいずれか多い方を個人再生後に支払う必要があります。
まず、「最低弁済額」とは、個人再生における借金減額率で最大のもので、借金額の大きさよって以下のように減額率が決められています。
したがって、700万円の借金を個人再生すると最大で1/5の140万円まで減額してもらえ、これを原則3年間(最大5年まで延長可能)で返済していくことになるのです。
つまり、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約38,889円
- 返済総額 :1,400,000円
- 利息:0円
となり、毎月約3.9万円を3年間返済できれば、裁判所に借金を完済扱いにしてもらえます。
清算価値(財産)が多い人は要注意
前述した通り、個人再生すると借金を大幅に減額してもらえます。
しかし、個人再生には、「清算価値保証の原則」と呼ばれるルールがあるため、借金を減額してもらえる代わりに、あなたが持つ財産と同等以上の金額については、最低限支払う必要があるのです。
そのため、「清算価値 > 最低弁済額」となった場合には、清算価値の金額まで最低弁済額が引き上げられることになります。
また、このとき引き上げられた最低弁済額のことを、「計画弁済額」と呼びます。なお、清算価値とは、あなたが自己破産した際、財産を処分しカード会社に分配した金額と同じ価値(金額)のことです。
したがって、清算価値(財産)を多く持っている人が個人再生すると、借金の減額率が下がってしまう可能性があります。
たとえば、
- 最低弁済額:140万円
- 清算価値:200万円
という人が小規模個人再生すると、計画弁済額は200万円になるため、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約55,556円
- 返済総額 :2,000,000円
- 利息:0円
となり、個人再生後に返済すべき借金が、増えてしまう結果となるのです。
給与所得者等再生では可処分所得額が多い人も要注意
いっぽう、個人再生のもうひとつの手続きである給与所得者等再生では、小規模個人再生の
- 最低弁済額
- 清算価値
という条件に加え
- 2年分の可処分所得額
という条件も加わります。
そして、個人再生後には、この中で最も多い金額を支払う必要があるのです。
なお、可処分所得額とは、毎月の給料から税金や家賃、保険代や光熱費、食費、最低限の生活費などを抜いた金額となります。
たとえば、月収40万円の人で、
- 税金:5万円/月
- 家賃:10万円/月
- 光熱費:3万円/月
- 食費:5万円/月
- その他:5万円/月
という生活をしている場合の可処分所得額は
40万円 -(5万円+12万円+3万円+5万円+5万円)=10万円/月
程度となり、2年分の可処分所得額は、
10万円 ×24ヶ月 =240万円
となるのです。
したがって、
- 借金:700万円
- 2年分の可処分所得額:240万円
という人が給与所得者再生すると、
最低弁済額:140万円 <2年分の可処分所得額:240万円
となるため、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約66,667円
- 返済総額 :2,400,000円
- 利息:0円
という結果になります。
最初の700万円に比べるとかなり減ってはいるのですが、最低弁済額と比較すると100万円も返済金額が増えるため、少々残念な結果といえるでしょう。
このように、毎月の手取り給料が多い人が給与所得者等再生で手続きを行う場合には、個人再生の借金減額率が少なくなる可能性があるため注意が必要です。
個人再生にはデメリットもある
借金を大幅に減額してもらえる個人再生ですが、次のようなデメリットもあります。
- ブラックリストに載る
- 借金の整理対象が選べない
- 官報に載る
- 同居した家族がいる場合、個人再生したことがバレやすい
まず、個人再生すると任意整理と同じようにブラックリストに載ってしまうのですが、任意整理よりも事故情報の掲載期間が5年~10年間と長くなってしまいます。
また、個人再生では、任意整理のように借金の整理対象が自由に選べません。よって、全ての借金が整理対象になるため、
- 自動車ローン返済中の車を手元に残したい
- 保証人付きの借金がある
という人の場合、任意整理など、個人再生以外の方法で債務整理した方がよい場合もあります。
そして、個人再生は裁判所を介する手続きになるため、官報に名前や住所、個人再生した事実などが掲載されてしまいます。
ちなみに、官報とは政府が発行する新聞のようなもので、裁判や債務整理に関する内容が掲載されたものです。
さらに、個人再生は、申し立ての際、給与明細や家計簿などたくさんの書類を準備する必要があるため、同居した家族にバレずに手続きを行うのが困難というデメリットもあります。
⇒個人再生のデメリットは8つだけ押さえておけば大丈夫!!
⇒個人再生しても車を残しておくための6つの方法

700万円の借金を個人再生した事例
最後に、700万円の借金を個人再生した例を、いくつか紹介したいと思います。
Aさん(小規模個人再生):借金額700万円・清算価値:100万円
毎月の約25万円の借金返済が苦しくなったAさんは、小規模個人再生で借金を整理することにしました。
- 最低弁済額:140万円
- 清算価値:100万円
の場合、
最低弁済額:140万円 > 清算価値:100万円
となるため、最低弁済額の140万円まで借金が減額されることになります。
したがって、
- 返済回数:36回
- 毎月の返済額:約38,889円
- 返済総額 :1,400,000円
- 利息:0円
という結果です。
Aさんの財産は100万円程度ありましたが、最低弁済額以下だったため、借金は最大の140万円まで圧縮された形となりました。
よって、毎月の返済負担は約1/5まで圧縮され、返済の負担がかなり軽くなったのです。
Bさん(小規模個人再生):借金額700万円・清算価値200万円・住宅ローン8万円
Bさんは、借金の返済が25万円あっただけでなく、平行して8万円の住宅ローンを返済していたのですが、生活が苦しくなったため小規模個人再生することにしました。
Bさんは自宅を手放したくないということでしたので、住宅ローン特則も利用することにしました。
しかし、Bさんは時価総額200万円の車を所持していたため、これを清算価値として計上する必要があったのです。
つまり、
最低弁済額:140万円 < 清算価値:200万円
ということで、Bさんの個人再生後に支払う計画弁済額は200万円ということなります。
したがって、
- 計画弁済額:200万円
- 返済回数:36回
- 住宅ローン:減額なし、返済額80,000円/月
- 月返済額:約55,556円+80,000円=163,200円
となり、借金は約1/3以下まで減額されましたが、自宅を手元に残すことには成功しました。
Cさん(給与所得者等再生):借金額700万円・清算価値:0円・可処分所得額12万円/月
可処分所得額が12万円/月と多めのCさんは、個人再生の手続きを依頼した弁護士からのアドバイスで、給与所得者等再生で手続きを行いました。
Cさんには主だった財産がないので、小規模個人再生で手続きをすると700万円の借金は最大で140万円まで減額される可能性がありました。
しかし、2年分の可処分所得額が、
12万円/月 ×24ヶ月 =288万円
とかなり高額になるため、140万円の返済だけではカード会社の同意を得るのが困難だと判断されたのです。
そのため、
最低弁済額:140万円 <2年分の可処分所得額:288万円
となり、
- 計画弁済額:288万円
- 返済回数:36回
- 月返済額:80,000円
という結果で、700万円の借金を半分以下まで減額できました。
Cさんのような可処分所得額が多い人が、個人再生すると借金の減額率が低くなる可能性が高いのです。
⇒個人再生の概要について詳しくはこちら
⇒個人再生の手続きの流れ/裁判所を介する個人再生の手続きは大変?
⇒個人再生の費用相場はいくら?裁判費用と弁護士費用の2種類存在

まとめ
- 700万円の借金を3年間で返済しようとした場合には、合計で2,110,403円の利息を支払う必要がある
- 700万円の借金を5年返済にした場合、3,665,240円という巨額の利息が発生するため、3年返済に比べかなり負担が増える
- 700万円の借金を個人再生すると、最低弁済額は140万円になるため、毎月約38,889円を36回(3年間)で返済できれば借金を完済扱いとなる
- 700万円の借金をおまとめローンにして3年間で返済しようとした場合には、利息は496,225円まで下がるが、毎月208,228円返済する必要がある
- 700万円の借金を任意整理すると、利息はカットされるが、毎月約194,444円を3年間返済し続ける必要がある
- 140万円以上の財産を持っている人が700万円の借金を個人再生しても、計画弁済額は140万円以上になるため減額率は減る
- 住宅ローン特則を使えば、借金を減額してもらいつつマイホームを残すことができる